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白い恐怖のくりふのレビュー・感想・評価

白い恐怖(1945年製作の映画)
3.5
【バカップルサスペンス】

先日『マーニー』を劇場でみたのですが、同じサイコアナリシス系なら本作の方がよくできていた気がする…と思い出して久しぶりに再見。…デキは思い込みでしたが(笑)。しかし、こちらの方が構成すっきりしていてみ易いのは確かですね。

本作、若きグレゴリー・ペックとバーグマン、彼ら主役カップルの「幼さ」が肝ですね。とにかく言動が危なっかしい。で、逃げるか分析するかいちゃつくか一つに絞んなさい!みたいにしてお話が転がってゆく。

で、これがイコール、本作のサスペンスになっているという(笑)。…ハラハラよりイライラの方が大きいんだけど。もうちょっと何とかならんの…と思っても文句は言えない。原題が『Spellbound』だから。要は酔っ払いのお話なわけですね。見事なクレーム対策だ(笑)。

この頃のペックって、風貌の病的加減が伊勢谷友介みたいだなーと思った。しょっちゅう死にそうな顔していて気の毒ですね。

バーグマンはインテリ箱入り娘な感じがよく嵌っています。ふくよか眼鏡美人で美味しそう。モノクロ画面に映えるぽってり唇。個人的にはもっと乱れてほしいけど。頭の中だけじゃなくあちらの扉を開(以下自粛)。ちなみに彼女自身は、精神分析にはまるで興味なかったそうですね。

映像的な外連味はあまりないですね。クライマックスの「白い滑走」での画づくりが、手抜きっぷりすごくて見るたび呆れます。ルームランナー乗ってんじゃないんだからさー(笑)。

またバーグマンを狙う銃と手を、ピント合わせのためでかいハリボテにした話は有名ですが、いま冷静に見るとまあコントっぽい。仕込まれた「サブリミナル赤い衝撃」も効いてるのかなー?

もちろん、当時の劇場でみてこその仕様とはわかるし、ヒッチのハッタリ魂も好きなんですけどね。午前十時の映画祭でやってくれないかな。スクリーンなら意外と衝撃かも。

そんな中、浮くほど飛びぬけ面白いのがやっぱり、ダリデザインの夢シーンですね。

ここは何度見てもはまる! 後に続く夢分析がホントに合ってんのか疑問なんですが(笑)、画のトリップ感は尋常じゃないです。一瞬、どう撮影したのか本気で迷わせるところもあるし。私にとってのSpellboundはこのシーンにつきます!

あと、二人を助ける「おじいちゃんの知恵袋」マイケル・チェーホフが醸す、知的な常田富士男、というふうなファニー味が、好きですね。

<2014.3.4記>
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