SANKOU

白い恐怖のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

白い恐怖(1945年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

研究一筋の精神科医コンスタンスは、新所長として赴任してきたエドワーズに一目惚れしてしまう。
しかしエドワーズには白地に線の入ったものを見ると、何かに怯えるという変わった特徴があった。
手術に立ち会った際にも卒倒してしまうおよそ精神科医らしくないエドワーズ。
やがてコンスタンスは彼の書いた文字が、エドワーズの著書に記されたサインと違うことに気づく。
目を覚ました彼は自分は記憶喪失であり、本物のエドワーズを殺したかもしれないと言う。彼のシガレットケースにはJ.Bのイニシャルが彫られてあり、どうやらそれが彼の本名を表すらしい。
彼は誰にも迷惑をかけずひとりで事の真相を探るためにコンスタンスの元を離れていく。やがてエドワーズが偽物であることに気づいた警察も動き出す。
果たして男の正体は何者なのか。どうしても彼を忘れられないコンスタンスは、ホテルの一室に隠れる男を見つけ出し、彼が殺人犯ではないことを証明しようとする。
精神科医であるにも関わらず、自分が惚れた男が人殺しであるわけがないという独りよがりな根拠で突っ走るコンスタンスの姿がある意味人間らしいとも思った。
恋は人の判断を鈍らせる。
コンスタンスの受け持つ患者にも自分が親殺しをしたと悩んでいる男がいたが、それと同じように男にも何か自分を追い詰めるようなトラウマが過去にあったのだと彼女は考える。
正直精神分析の内容はお粗末に感じた。男の見た夢を分析するシーンも、あまりにも整合性を求めすぎて胡散臭く感じた。
ただサルバドール・ダリが作り出した夢の舞台装置はとても幻想的で素晴らしかった。
印象に残るカメラワークもそうだが、ヒッチコック監督は必ず観る者の目に焼き付くようなシーンを作り出すなと感心させられる。
男の記憶が戻るためにはなりふり構わず突っ走るコンスタンスの姿が勇ましいが、その甲斐もあって男は記憶を取り戻していく。
最後まで物語の筋はとても良く出来ていると思ったが、全体的に緊迫感が足りず冗漫な印象を受けた。
そもそも男の正体にそこまで興味をそそられなかったし、男には見向きもしないとされているコンスタンスが結構隙だらけなのも気になった。
時代的にまだまだ独立した女性というものは描きにくかったのだろうか。
グレゴリー・ペックの若々しさとイングリッド・バーグマンの美しさが際立つ作品ではあったが。
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