早朝、人影のないニューヨーク五番街にタクシーを走らせ、ジバンシィのドレスに包まれたオードリー・ヘプバーンをティファニーで降ろし(この時点でファサードの時計によれば午前5時47分頃)、彼女にショーウィンドウを眺めながらデニッシュを齧らせて、包装紙を路上のゴミ箱に捨てさせたというだけで、ブレイク・エドワーズを無能とは言わせないという強い気持ちが否応がなしに湧き上がってくる。
この2時間弱の作品の、控えめに言っても9割方が、セリフもなければ原作にもないこの2分半の冒頭シーンに凝縮されているのであるから、この作品のほかの部分にどのような瑕疵があろうともそのようなことは瑣末なことと言わざるを得ない。