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自転車泥棒のRyoSのレビュー・感想・評価

自転車泥棒(1948年製作の映画)
4.0
「ドイツ零年」のような、どこまでも絶望感に包まれる映画というわけではない。随所に笑いのツボがあり、いくぶん観客を楽しませようという気持ちが伝わる。でもそれはつかの間に過ぎない。

父親は息子ブルーノと自転車を探す。息子といってもブルーノはまだ父親に付いて回ることしかできないほど幼いのだ。ここにこの映画の味噌がある。観客は一般人目線ではなく、ブルーノの眼を通して父親を見るのだ。表向きは自転車を探すために優しい友人に協力してもらったりしている父親の背中が、ブルーノの眼を通して伝わってくる。

探している途中、ブルーノが立ち小便をしようとするシーンがある。笑いのツボであり、クスッとなる場面だ。しかし、ここにはただの笑いのツボ以上の意味があるのではないかと思う。ブルーノはまだ幼いのだ。戦争直後であっても子供は子供なのだということに気づかされる。一緒に探していて、ブルーノがちょこまか動くのは見ていて楽しいが、ふと立ち止まって考えると、ブルーノは父親についてってちょこまか動くことで社会を見ているのだ。もちろん子供に見せられるような社会ではない。
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