キャッチ30

自転車泥棒のキャッチ30のレビュー・感想・評価

自転車泥棒(1948年製作の映画)
4.0
主人公の焦燥と群衆

『わたしは、ダニエル・ブレイク』のケン・ローチに影響を与えた一本。

舞台は終戦直後のイタリア・ローマ。人々は仕事を求めて喘いでいる。その中の一人アントニオはポスター貼りの仕事をもらうが、自転車が必要になる。慌てて質入れしていた自転車を請け出し、仕事の初日を迎える。しかし、アントニオはその日に自転車を盗まれてしまう。彼は息子のブルーノと共に必死に自転車を探す。でも見つからない。

伝わってくるのはアントニオの焦燥感と群衆だ。彼は自転車を見つけたいあまり、行く先々で出会った人間を犯人だと決め付ける。それに対し、「証拠はあるのか」と喰ってかかり、騒ぎが大きくなり群衆が集まってくる。結果的に被害者であるアントニオが悪者として扱われてしまう。これが延々と続く。個人対集団の構図。ラストのアントニオの表情は今後の不安と自分の愚かさを恥じている姿に見えた。