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自転車泥棒のsonozyのレビュー・感想・評価

自転車泥棒(1948年製作の映画)
5.0
『幕あい』で見たくなり、久々の再見です。
第二次世界大戦後のイタリア・ネオレアリズモ映画の代表作。

ビルの外階段に出てきた職業安定所のおっさんから呼ばれるのを待つ、日々仕事にありつくのに必死の男たち。

名前を呼ばれたアントニオ・リッチは、市役所のビラ貼りの仕事を得るが、必要な自転車は生活苦から質屋に入れてしまっていた。
妻マリアが家のシーツをかき集め2人は質屋へ。なんとか7500リラを手に入れると、自転車を預けてある店に6000リラ払って取り戻す。
マリアは“聖女様”と呼ばれる占い師のところにより、仕事が得られたお礼に50リラ払いたいと言うがアントニオはインチキだと連れ帰る。

支給された制服とマリアに修繕してもらった帽子でキメたアントニオは意気揚々と、GSで働く小さな息子ブルーノと朝早く仕事に向かう。ベッドにはまだ小さな赤ちゃんが眠っている。

先輩からポスターの貼り方を教わり、早速仕事に取りかかっていたが、一人の若者が置いてあったアントニオの自転車を盗み逃げ去る。追いかけるアントニオだが、見失い、警察に届けるも、自分で探せと言われる始末。

自転車がなければせっかく得た仕事を失い、家族が生きていけなくなる。
芝居の演出をしている友人のバイオッコに相談し、翌日、彼の部下2人、ブルーノも含め5人で、盗難自転車も売られているという市場を探し回るが簡単には見つからない。

別の市場に移動したアントニオとブルーノ。土砂降りの雨をしのいでいると、盗んだ若者が自転車を止め、老人に金を返しているのを発見し追うが・・・

ここから先のアントニオ、そしてブルーノの悔しさ、やり場のない怒り、やるせなさ、絶望。
そして、あの状況では、誰もがああなってしまう可能性が高い結末。
人情による唯一の救いが残されたとは言え、彼らには明日の希望のかけらも見えない・・

アントニオ、マリア、そして子役ブルーノ、どう見てもいかさま占い師にすがる人々、市場で自転車をさばく人々、少年とそのコミュニティの人々、あの老人・・
戦後の貧困にあえぐイタリア社会のリアリズムに心揺さぶられる名作です。

アカデミー賞: 名誉賞
英国アカデミー賞: 総合作品賞
ニューヨーク映画批評家教会賞: 外国語映画賞
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