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アメリカの影のhasseのレビュー・感想・評価

アメリカの影(1959年製作の映画)
4.0
演出4
演技4
脚本-
撮影3
音楽5
技術4
好み4
インスピレーション4

ジョン・カサヴェテス監督の主要作品の配信が始まったので、初監督作品から観賞。

『アメリカの影』は、ニューヨーク・インディーズ映画の先駆であり、またセミドキュメンタリーというジャンルのフロンティアでもあるという点で映画史的に非常に重要な作品。

役者の台詞は、監督によるシーンの説明に応じて役者自身が即興で喋り完成されていくスタイルを取ったという。
私が観た印象は、即興の対話を記録していくというより、劇映画の母体に、本来不適合であるはずの即興台詞を受肉させた結果、これまで観たこともない類いの映画が出来上がったという感じ。ロケ、即興演出、無気力な若者たち、ベッドシーンという本作の諸要素は、それまでのアメリカ映画史の文脈から大きく逸脱した、同時代のヌーヴェル・ヴァーグの映画たちに親近感を見いだすことができる。

作中で描かれる白人の黒人に対する距離感は、あまり詳しくないので推測だが、かなりリアルなものなのだろう。
ジャズ全盛期で、チャーリー・パーカーやマイルス・ディヴィス等の黒人演奏者がアメリカで大人気を博した時代。白人の大衆はアーティストとしての黒人を受け入れていたが、自分の恋人に黒人を選ぶことはなかった。トニーが白人と黒人のハーフのレリア(見た目は白人)の兄(同じハーフだが見た目は黒人)を紹介されたとき、直接的な侮蔑の言動こそしないものの、そそくさと帰ろうとする。あの微妙な距離感と態度がリアルだった。歴史ではもっと過激な黒人差別や、差別的な社会制度があったことが強調され、それもまた事実ではあるのだが、本作の微妙な距離感と態度もまた事実だったのだろうと推測する。
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