京都の大商人の放蕩息子である世之介が父親から勘当されながらも全国を旅して女性遍歴を重ねる姿を描いた、増村保造監督のドラマ映画。もちろん原作は、井原西鶴のデビュー小説(浮世草子)である『好色一代男』。なぜこの映画を増村保造監督が撮ったのか不思議だったが、以前から『好色一代男』の映画化を希望していた市川雷蔵が増村監督に依頼したらしい。
まあ、スケベな世之介が行った土地土地で女をすけこますというだけの内容なのだが、でもこういう表現から想像するような人物とはちょっと違った、ある意味で飄々とした世之介を市川雷蔵が出ずっぱりで好演している。
一方、女性たちはスポット参戦なので、各人はちょこっとしか出てこない。京都随一と言われる遊女・夕霧太夫を取りで演じている若尾文子は貫禄十分であるが、個人的に一番印象に残ったのは、世之介と駆け落ちをする網元の妾を演じた中村玉緒。悲惨な最期を迎える哀れな女性を鬼気迫る形相で演じている。