どちべそ

火垂るの墓のどちべそのレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
3.5
毎年この既設になると昔は金曜ロードショーとか地上波放映してたと記憶しているけど、近年は放送されなくなったような。どんどん放送すればいいと思うけど。

自分は最初は「わーいジブリだー!」ととなりのトトロ的な話を期待し、わくわくしたものの冒頭の清太のセリフ「僕は死んだ」に嫌な予感を覚え、話が進むにつれ陰惨になっていく内容に驚愕し、「ドロップなめたい」に打ちひしがれた。絵柄も色使いもジブリなのに。つらい。

昔テレビで放送されたときに祖母と一緒にみていたら、死体を埋めるシーンで祖母がぽつりと「たくさん死んだのよね、気の毒にね」言い放ち、その一言にものすごい迫力があったのを鮮明に覚えている。

清太や節子のような子は当時珍しくなかったと思うとあまりにも切ない。一晩の地獄を生き延びても今度は日常という生き地獄を生き延びなければならないところに戦争の恐ろしさがある。

祖父母と一緒に地上波放送されているこの映画をみたとき、まさに東京大空襲の生き残りの浅草育ちの祖母と徴兵寸前で戦争が終わった地方生まれの祖父ではなんとなく温度差があったのが印象的だった。

なんだかの媒体で、清太と節子は発展した都市を眺めつつ自分が死んだ当時の記憶をずっと繰り返しているなんて記事を読み、この子たちにとって戦争はいつ終わるんだろうと悲しくなった。

ところどころいわゆる過激な表現が出てくるので苦手な人は該当のシーンでは手でキャッと顔を覆いつつ、平気な人はそのまま鑑賞してください。











本編とは全く関係ない個人の覚書程度だけど、せっかくのなので祖母の体験談をいれときます。自分が忘れないように。念のため。
本編とは全く関係ない話なので読み飛ばしてほしい。そのうち消すかもだし。

映画を見終わってから、祖母は東京大空襲をいかに生き延びたか、さて一夜明けてのその惨状はと体験を話してくれた。
その話は架空の世界のようで、それでいて事実なのだと思わざるを得ないような迫力があり、変な気持ちになった。祖母の話に出てくる赤く燃え上がる惨禍の東京には、自分と祖父母との楽しい思い出があちこちにあるからだ。

落ちてる発火前の焼夷弾をまたいで逃げ、逃げる途中近所の人が「こっちいらっしゃいはやく」と庭に入れようとしてくれたのを断って、ほんの少し走った所で振り返ったらもう後ろは全部火の海だったとか。
また、空襲のあった次の日に道を歩いていたら井戸から女の人が上半身を投げ出して死んでいて、長い髪が前にたれておばけみたいだったとか。
とくに怖かったのが川に遺体がプカプカういていたエピソードで、それ以降隅田川の水のにおいが怖くなり、水に近寄るのがはばかられるような気持ちになった。

…そういえば祖母が空襲を生き延びていなかったら自分は今ここでのんきに映画の感想なんか書けなかったという事実に今更気づいた。
ばあちゃんが生き延びて自分が生まれたおかげで我が配偶者はなんだか毎日幸せそうです。ありがとう。マジリスペクト。

この日常を大切にしたい。
どちべそ

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