ROY

鮮血の美学のROYのレビュー・感想・評価

鮮血の美学(1972年製作の映画)
4.2
“今起ったことはすべて虚構にすぎない”
映画を観ながら、そうつぶやいて下さい。

心なき4人組の男たちによって娘を殺された父親の復讐劇を描く。

『悪魔のいけにえ』と並ぶグラインドハウス映画の最高峰!

■ABOUT
後年それぞれ『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』『スクリーム』を手がけることになるショーン・S・カニンガム(製作)とウェス・クレイヴン(監督)が組んだアメリカン・ホラー・ムービー史に残る重要作。ニューシネマ全盛期に製作されただけあって16mmで全編野外撮影されたというバイオレンス・シーンは後年のそれとは異なり、ドキュメンタリー的で何とも生々しく惹きつけられる。ただし幻想的なトーンやストーリー(凶悪犯のグループに暴行~惨殺された娘の両親の復讐譚)が実はイングリッド・ベルイマンの『処女の泉』を踏まえたものだったりするところは、いかにも大学の英文学講師の経験があるインテリのクレイヴンならではの世界だ。(長谷川町蔵)

■NOTES
『鮮血の美学』は、タフでビターな小さなスリーパー映画で、期待値の4倍ほどの出来栄えだ。この映画は、「暗くなるまで待って」でアラン・アーキンがオードリー・ヘプバーンに向かって暗闇から飛び出してきたとき以来、口惜しさではどの映画よりも勝っている。

しかし、この映画が単に良いホラー映画だという印象を与えたくはない。確かに恐ろしいが、超常現象とは無関係の意味での怖さだ。郊外に住む二人の少女がロックコンサートのために街に繰り出し、サディスティックな脱獄囚の一団とそのだらしない彼女に誘拐され、レイプされ殺されるというストーリーである。そして、殺人鬼もびっくりするような偶然が重なり、一団は少女の両親の家で一夜を過ごすことになるのだが......。

手荷物の中に盗まれたロケットと血のついた服があったため、両親は偶然にも犯人の正体を知ることになる。激怒した父親は、たった一人で犯人に挑み、彼らを殺害してしまう。この中に見覚えはないだろうか?少し考えていただきたい。現代的なディテールはさておき、これはイングマール・ベルイマンの『処女の泉』の筋書きとほぼ同じである。

映画の冒頭で、この話は実話に基づくと説明されるが、単に「名前だけ変えた」だけなのではないかと思っている。しかし、『鮮血の美学』から伝わってくるのは、あまりにも直接的で強烈な物語であり、(ほとんどが単なる古き良き搾取映画の気分でいた)観客を精神的に揺り動かすのであった。

ウェス・クレイヴンの演出は、ほとんど耐え難いほどの劇的緊張から我々を解放しない(ただし、バカな警官たちが登場するくだりは、オーバーアクトでプロットの信頼性に深刻な影響を与える)。演技は淡々としていて自然だと思う。身構えることもない。台詞やニュアンスに対する耳は肥えている。そして、この映画には悪がある。血みどろの逃避行でもなく、束の間のスリルでもなく、殺人者たちの凶悪な本性を十分に感じさせてくれる。この暴力に栄光はない。クレイヴンは、被害者と同じように恐怖を感じる若いメンバーを登場させた(これもベルイマンの物語を借用した)。この映画は、サム・ペキンパーの『わらの犬』(1971年)と同じ哲学的領域をカバーしており、より硬派な作品である。確かに、人の家は自分の城である。しかし、城と恐怖のの記憶しか残されないことを望む人はいるだろうか?

Roger Ebert. 1972-01-01, https://www.rogerebert.com/reviews/last-house-on-the-left-1972

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Jake Dee「10 Behind-The-Scenes Facts About Wes Craven's Last House On The Left」『Screen Rant』2020-10-15、https://screenrant.com/wes-cravens-last-house-on-the-left-behind-the-scenes-facts/

■COMMENTS
最高だ
ROY

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