一人旅

鮮血の美学の一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

鮮血の美学(1972年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

ウェス・クレイヴン監督作。

脱獄犯に一人娘を殺された両親の復讐を描いたバイオレンス映画。
娘が汚らわしい男に無慈悲に弄ばれ惨殺されるというショッキングで不快な内容の作品だが、鑑賞者の感情をさらに逆撫でするように流れるリズミカルで陽気な音楽が印象的で、クレイヴンらしい混沌さは腹立たしいほどに発揮されている。その代わりかなり荒削りな仕上がりになっていて、娘を失ったことで味わう両親の悲しみや絶望といった心情描写はほぼ皆無で、ただただ怒りに身を任せて獣のように復讐を果たしていくのだ。娘の母親が脱獄犯のアソコを噛み切る描写は強烈だし、チェーンソーで脱獄犯を追い詰める父親の姿は別映画を彷彿とさせる。
脱獄犯の鬼畜っぷりだけは秀逸で、復讐が果たされるその時までに脱獄犯に対する鑑賞者の怒りは頂点に達する。そこから畳みかけるように次々と復讐を果たしていき鑑賞者の心もようやくスッキリ.....とはいかない。あまりに中身が無いし、監督が見せたいのは生々しい暴力と性描写だけだ。ベルイマンの『処女の泉』をモチーフにしているというが、類似しているのは大まかなプロットだけ。そもそも娘は処女ではなさそう(?)だし、ドラッグを求めて自ら脱獄犯一味に接近している。もちろん「神の沈黙」のような宗教的テーマ性があるわけもない。
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