・ジャンル
スラッシャー/ホラー/リベンジ
・あらすじ
親友フィリスと共に過激なパフォーマンスで有名なバンドのライブへと出掛けた少女マリー
会場は治安の悪い地域にあったがそこはフィリスの地元という事もあり彼女はさほど心配していなかった
そしてライブの前に大麻を購入しようと民家の軒先に立つ男ジュニアに声を掛け迎え入れられるがそれは彼の罠
中にはいたのはジュニアの父である連続殺人犯クルーグ率いる逃亡犯グループだった
間も無くフィリスは彼らに犯され、翌日には別の場所へ拉致
車の故障で足止めとなったその場所は奇しくもマリーの家の目と鼻の先であった
誕生日を祝う準備をして待っていた両親は帰らぬ娘への心配に気を揉んでいたが間近で悲劇が起きている事など知る由もない
そしてマリーもまた犯され2人はやがて殺害されてしまうのだが…
・感想
ウェス・クレイヴン御大の手掛けた有名スラッシャー作品
自身の作品なので「スクリーム」でパロディしている可能性を考え予習として鑑賞
レイプを起点としたリベンジという点では後の「発情アニマル」こと「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」に通ずる部分がある作品ではあるものの被害者が弄ばれた末に殺害される事もあり少々毛色が違う
残された両親がひょんなきっかけから訪問者達を加害者と気付き復讐を決意するというのが居た堪れない…
加えて‘72年の作品にしてはゴア描写も度々見られ、現代の様にCG頼りでもないので過激さはそれほどではないもののだからこそ痛ぶり追い詰めて殺す様の惨さが生々しく印象的だった
最初のテロップでは実際の事件を描いたとされていたが本当の所どうなのかは分からない
それでも保安官の数も少ない田舎町ではあり得てしまいそうな事件なのがまた物悲しい
最も特徴的だったのが劇中、度々流される陽気な劇伴
まるで平和な片田舎に持たれるイメージの幻想を陰惨な事件とのギャップで打ち砕く様で胸糞悪さをより引き立てていた様に思う
これは保安官2人の間抜けさもまた同様の効果をもたらしていたと言える
そして両親による復讐
2人が真実を知る発端となった逃亡犯グループのリーダー、クルーグの息子であるジュニアの父にヘロインを与えられ支配されていたという背景やフィリスとマリーを見殺しにしてしまった罪悪感によるトラウマなど重苦しい導入も悲劇的
そこから始まる復讐に関しても綿密に罠を散りばめたり、母エステルが色仕掛けしたりと計画的に行われるが決して順調には進まない
泥臭く拮抗する両者の殺し合いには常に悲哀が付き纏い、事を終えたラストには強い虚脱感が漂う
心理的な描写を重んじるウェス・クレイヴンらしい救いのない重たい名作だった
惜しい点としては父ジョンが家中に仕掛けていた罠がほぼ機能していなかった事や彼が医師であるのを利用した拷問オペが少ししか映されなかった事くらい?
とはいえショックバリューを求めて観る類の作品ではないので許容範囲ではある
序盤は少し治安の悪い地域や過激なパフォーマンスを行うミュージシャン、若者の奔放なファッションへの偏見を強調する様な部分が目立ち若干鼻に付いたけれど全体的には良く出来た作品だった様に感じた
昨今は性犯罪のみでなく様々な犯罪の被害者に不用心さを指摘する意味で揶揄する言葉に「悪いのはあくまで加害者だ」と反発する人々が多く見られる
倫理面で言えばそれは正論である一方で人間も動物だし誰もが一枚岩ではなくディストピアもそれはそれで許容されるべき物ではない
用心するに越した事はないというのは時代を問わずこちらもまた同様に正論であると個人的には改めて思わされた
作品としては前述の「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」が刺さった人にはこちらも刺さると思う
リメイク版もあるという事でそちらも鑑賞するけど変に陳腐化していないと良いなぁ…