【鉄分の盗り過ぎ】
JAIHOにて。これは確か劇場で見て、ナンデ日本映画ってこう、目を剥いて延々唸るんだろう…とまず、ウンザリした。で、ことごとく、見たいと思うものから離れていった気が…。
昭和の錆び寂れた工場に、モノクロ・サイレント映画の残滓を鉄柱でねじ込み、鉄か生ゴミかわからぬ吐瀉物で掻き混ぜて、そこから溢れる呻き声に、インダストリアル・ミュージックを被せ無理やり、現代仕様に偽装した蛮族映画。
オレはこんなに欲求不満なんだあああああ!と絶叫し続けるパワーは凄い。この、だあああああ!の熱量、画面づくりへの情熱からつい、ほだされる人が当時は、多かったのかな?
あとはミソジニー。でも、症状は無邪気な方ではと。女を股の穴から切り裂きたい願望。
演じる?田口トモロヲは監督の共犯者なのか、言われた通りに犯ってるだけなのか、わかりませんが、見ていて気の毒になります。
でも、これがトモロヲ・ワールドか?…と見ていると、出てきた塚本監督が乗っ取るんですよね。彼、スゴクいい顔しているんですが、今までの混沌とは無縁の顔を、最後で晒してしまう。別の物語が始まったみたい。これ、心地いいのだけど、映画としては欠点だと思う。
せめて、始めに顔をもっと見せておいて、その変化で始終を串刺すべきだった、と思います。
監督は同時期の『AKIRA』鉄雄との関連性を否定していますが、アッチも鉄と融合してグチャゲロになって大騒ぎして終わるハッタリ映画だから、発想レベルは同じ程度でしょう。
最後の、廉価版小林幸子みたいなジャンクフード(被り物)が微妙な笑いを誘いますが、廃品回収車があんなカンジでご町内を走っていたら、それはそれで楽しいな…とは思いました。知り合いのアレな人が、家の外に似たようなもん作って置いていたなあ…そういえば。
これ以降の、塚本映画で感心したものってあまりないのですが、その中で『野火』が良かったのは、本作と同じく日本人が蛮族に還る話だから?監督が原点回帰して、それがよかったからじゃないか?などと、ふと考えたりもしました。
人に勧める気にはなれませんが、邦画史のゲロ染みとして本作、なかなか消えずに残ってゆくのではないでしょうか。
<2022.12.10記>