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パッテンライ!! 〜南の島の水ものがたり〜のmitakosamaのレビュー・感想・評価

3.2
日本統治下の台湾で、間伐地帯に烏山頭ダムを作ったという八田與一を扱ったアニメーション。
日本ではあまり知られていないが台湾では割と有名な人らしいです。

ただ、この映画の構成は八田を取り扱いながらも、彼に関わる少年二人の物語をメインとしている。
台湾人の少年で土木技師見習いとして八田を支えるエイテツと、飛行機のパイロットを目指すことになる日本人の少年ススム。さらにガールフレンドのミヨも登場。

元々貧しい農家の息子で水汲みに苦労していたエイテツ。幼少時にススムと出会う。
列車の上で語り合う二人。列車がトンネルに入った途端、3年後に物語が飛ぶ!なんだその演出?!タイムトンネルかよ(笑)
成長し八田に惹かれ土木の勉強をするエイテツ。飛行機の夢に踏ん切りがつかずモヤるススム。彼らの夢とともに13年かけダムの建設へ。

まぁでもフィクショナルな少年少女3人組を設けてドラマ部分を盛り上げたかったのもあるのだろうが、それにしてももう少し八田に関するエピソードを掘り下げて欲しかったよ。

八田がやってくることを意味する「パッテンライ」だそうだが、なぜ彼がそう呼ばれるようになったか一切説明が無い。
また、なぜ彼が台湾のインフラ事業に就くのか、その辺の彼のバックボーンも描かれない。実際は浜野弥四郎なる台湾の水道インフラを手がけた人に師事したそうで、その辺のドラマもあったろうに。

さらに、劇中でも描かれるトンネル事故だが、史実では犠牲者1人1人の家族に謝罪に訪れたそうだ。批難もされたが、亡くなった者の為にも絶対に工事を完成させろと激励を貰ったこともあったという。
この辺のドラマも描いて欲しかったよ。
関東大震災によりリストラを余儀なくされた時も再就職に有利な優秀な者からクビにしたとか、色々氏の人となりを表すエピソードがあったそうだし。

また、氏のエピソードを手繰ることで当時の日本の台湾統治の実情も掘り下げたらもっと深い話になったんじゃないかしら。この映画でも暗に表現はしているが、マラリア対策の為に水源確保や台湾米の輸入など、その時代背景をもっと扱って欲しかったな。
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