ろくすそるす

海辺のポーリーヌのろくすそるすのネタバレレビュー・内容・結末

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

 冒頭の引用「言葉多すぎるは、おのれを傷つけるものなり クレチアン・ド・トロワ」

 ザ・夏映画!何年かぶりの再鑑賞。恋愛で男を見る目がない女マリオンは十五歳のいとこポリーヌを預かり、ビーチへ休養に訪れる。そこで、古くからの友人であるピエールと再会する。ピエールはマリオンのことが意中の相手である。
 だが、マリオンはピエールにサーフィンを習う薄毛の好色男、アンリに一夜にして惚れてしまった。やがてポリーヌもシルヴァンという同年代の少年と相思相愛になるが、アンリがキャンディー売りの女性と密通したことを契機に話はこじれていく……。
 物語自体も映像風景もきわめてシンプルだ。にもかかわらず、軽妙で清々しい印象を与えるのは、綺麗な景色とごてごてと飾らない登場人物たちの賜物だろう。
印象に残ったのは、

 マリオンが語る恋愛哲学に当てはまっているのにも関わらず、一番近しい関係で相性の良いピエールは虐げられるのが、非常に哀れだ(マリオンは異性に神秘性を求めている)

ということと、

 アンリが欲求を満たすために女性と関係し、ブスであるキャンディー売りをその「いびつさ」において高評価したのに対し、マリオンはオルダス・ハクスレーの『すばらしき新世界』で出てきそうな遺伝子が組み替えされたような「完璧な女」みたいだからつまらない、と発言するシーンは何度見てもいけすかない

ことにつきる。

 アンリはマリオンにさよならもせずに、船に乗り海外へ行ってしまう。そして、ピエールの愛は実らずは報われない。

しかし、結果的に一夏の嫌な思い出となってしまったにも関わらず、前向きなマリオンは気持ちを切り替え、ポリーヌとともに海辺を立ち去る。
この時の颯爽とした二人の表情。悲恋をさらりと受け止める「さっぱりとした」感覚。どことなく煮えきらない印象を受ける登場人物の「男性」たちと大違い!これがロメールの味なのだろう。

 ちなみに、クズ野郎アンリの家でちらりと写ったレコードの中にフランク・ザッパとキャプテン・ビーフハートの「BONGO FURY」があったのは、ロメールの趣味なのだろうか。
 マリオン(グラマーな体型にぴったりの水着)、ポリーヌ(主演を務めるアマンダ・ラングレットの幼児のような体型に半ケツのビキニ)の露出度の高いエロい水着にも注目したい。