Ren

ファンタスティック Mr.FOXのRenのレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
3.5
『犬ヶ島』のときにも思ったけど、あの唯一無二の箱庭感はアニメとの食い合わせが良くて、むしろ普段のウェス作品がアニメの実写化なのではという気すらしてくる。アニメだから許されるケレンとドタバタで押し切っていてとても楽しめた。

ストップモーションアニメにノスタルジーを感じる。これは特別自分が『ウォレスとグルミット』で育ち『ジャム・ザ・ハウスネイル』や『カペリート』に素晴らしいトラウマを植え付けられて育ったからでもあるが、そもそも静止しているものを動かしたい=連続写真という映画の起源のことを無意識に思ってしまうからな気がしてならない。今作もぜひEテレ5分枠で延々と見ていたい。

キツネのちょっとゴワゴワしていそうな毛並も、火・水・煙など非固形物すらもモノで表現してしまうイタズラ心みたいなものも終始可愛かった。ジオラマの中に投げ込まれたように無邪気に楽しめる。

その裏、銃や重機や手榴弾で物を次々と破壊したりネズミが汚かったり鶏を噛み殺したりする、この世界観に似つかわしくないようなアグレッシブさも顕在。そもそも今作は、生きることとは何かの犠牲の上で成り立つものだという話であり、Mr.フォックスはじめキツネたちと人間たちは実は線対称なのではという話だ。キツネたちの野生的でワイルドな描写は正しいと思う。

宮崎駿的な複雑そうなテーマにもできそうだけど、人間(悪)vs動物たち(被害者)の超分かりやすい二項対立・勧善懲悪になるのが児童文学らしくてシンプルに楽しめる。明確な立場の塗り分けは、パキッとした画作りとの相性もいい。

左右対称にキメまくった画角からも分かるようにウェスは事象をそのままリアルに映し出そうとは全く思っていなくて、自分が思うベストのルックに調整してお出ししてくれる「監督」だ。一方、役者陣が結局彼の操り人形の域を出ないため、超豪華&実力派俳優が集結していても「なんで?」と素直に有り難がれないという副作用もある。アニメなら、そもそも「人形を→動かす」のがアニメなので彼の作家性ともハマるのだと思った。

前半にも書いたけど、アニメシリーズ化してほしいなー。彼らの日常をもっと観たい。

その他、
○ 冒頭の横スクロールアクション、めっちゃゲームだ!
Ren

Ren