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ファンタスティック Mr.FOXのmanamiのレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
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ウェスアンダーソン6作目はストップモーションアニメ。ロアルドダール『すばらしき父さん狐』が原作らしい。子どもの頃に読んで惚れ込んだウェスが、既に亡くなった作者の自宅に泊まり込んで脚本を完成させたのだとか。
主人公はキツネのフォクシー。妻子との安定した暮らしを守るため盗み稼業からは足を洗っていたのに、「野生動物だから」本能を抑えきれなくなり、しかもどんどん周りも巻き込んでエスカレートしていく。
そんな彼をカタギに引き戻そうと説得する妻、フェリシティー。なんだか妖艶〜、パペットなのに〜、色っぽい〜。
そして一人息子のアッシュ。彼がほぼ一方的にライバル視するのは、訳あって居候中のクリストファソン。
そんなキツネ達に加えて、他にも動物達がいっぱい登場するんだけど、みんなピュアな存在としてじゃなくて一癖も二癖もある、なんだか「人間味あふれる」キャラになっているのがまた良い味わい。フォクシーの相棒カイリにいたっては、間の抜け具合がとんでもない名優レベルよ。
動物達のファッションもどれもこれも可愛らしいと思ったら、生地はウェス御用達の仕立て屋さんのものらしく、どうりでオシャレなわけよ、さすがだわ。アッシュお手製の靴下泥棒マスクも、キツネのしっぽネクタイも、笑ってしまうわ。
会話ももちろん軽妙洒脱、ポップなのにシュール。「人違い」ならぬ「狐違い」ね、確かにね。フワッとクスッとさせてくれるセリフいっぱい。夜行性のくだりとかさ、あんな気の利いた一言をさらりと言えるセンスが自分にも欲しいと、謎に憧れまで生まれちゃう。
音楽もこれまたずっとかっこよくて、とりわけ出し抜けに披露される弾き語りがとてつもない〜。かっこよすぎないか、何だったあれは。
吹替、U-NEXTでは日本語だったんだけど、もとの声優陣はジョージクルーニー、メリルストリープの夫婦役始め豪華キャストで、しかも「ライブ感を出すために野原を駆け回り穴を掘り、汗だく土まみれになって収録した」とのことで、ぜひとも堪能したかったな。
構想10年、撮影期間2年、総カット数125280、パペットはサイズ違いで計500体、セット数150、小物は4000点以上という、監督の「推し」にかける愛と情熱が十二分に伝わってくる傑作。

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