Jimmy

容疑者Xの献身のJimmyのレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
4.8
初見は公開時(2008年10月18日)の映画館(池袋HUMAXシネマズ)だが、その後、何度も見ている作品🎥

ガリレオ・シリーズ第一作にして傑作‼️

この映画の原作は東野圭吾によるものだが、私は同氏の多数著書の中でも「容疑者Xの献身」は最高傑作に位置する作品だと思っている。
殺人事件によるストーリー展開と「献身」という言葉がピッタリの愛情描写がたまらない。

映画化された本作も、原作に多少手を入れているものの、根底にある「愛情表現」はキッチリと映像化されていて佳作となっている。

何といっても、石神役の堤真一が素晴らしく、少し前屈みの姿勢・話し方など圧倒的な存在感である。

テレビドラマ「ガリレオ」の延長線的要素として柴咲コウも出演させることでエンターテインメント作品にしているあたりも、これでイイのではないか…と思う。

劇場で観て以来、ブルーレイも購入・鑑賞し、「やはり、良い作品は何度観ても良い」ことを再認識した。



―――<以下、キネマ旬報に掲載された拙筆「読者の映画評」>―――

本作は、タイトルにもなっている「容疑者χ」たる天才数学教師・石神の隣人母子(靖子と娘)に対する深い愛情がその根底にあるが、母子が引き起こした殺人(正確には石神によるホームレス殺人も含む)に振り回される刑事や天才物理学者・湯川による事件真相への接近&到達によって、東野圭吾の原作をかなり忠実にスリリングな映画にしている。
例えば、高架下で生活するホームレス達が流れるようなカメラワークで殺人事件の前後に2回描写されるが、1回目に映されたホームレスの一人が2回目には居なくなっている。
石神トリック(=東野トリック)を知っている観客は「あの居なくなったホームレスが殺されたのか」と石神の犯罪に気付く仕組みとなっており、細かい気配りが感じられる場面である。
但し、ホームレス群の一人なので、見逃してもおかしくないほど自然である。
こうした細部に至る配慮は巧妙に構築された原作へのリスペクトを表すものだろう。

本作では殺人事件のトリックを紐解く面白さだけではなく、石神の靖子母子に対する想いに心衝かれる。
とりわけ印象的だったのは、堤真一演ずる石神が松雪泰子演じる靖子に公衆電話から電話する場面の2分割スクリーンである。
こうした瞬間が2人だけになれる唯一の機会である。
しかし、それも電話という手段であって実際は物理的に離れた存在でしかないという事を「画面中央の境界線」が象徴的に示した名場面といえるだろう。

原作を欽慕している観客にとって本作の主人公は石神であり、どうしても石神を軸に映画を観てしまう。
石神役の堤真一が地味な服装で少し前傾姿勢を取ってすっかり石神になりきっており、特に自分の部屋で数学の問題に取り組む場面の背中が学者然としていて素晴らしい。
映画会社の「ガリレオ、遂にスクリーンへ」という宣伝文句が空回りするほどだ。
本作におけるガリレオ=湯川が脇役に見えるほど、石神像が見事である。

(以下、映画評の締め部分はネタバレ記載のため、約100文字(原稿用紙の半分)を割愛。)
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