紅梅シュプレヒコール

容疑者Xの献身の紅梅シュプレヒコールのレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
4.0
ガリレオシリーズは、放送当時何となく観ていた程度で愛着が特段あるわけでは無かったので今作は観ていなかったのだが、なにかと好評価を目にする機会が多かったので鑑賞してみた

それなりに公開されてから年月が経っているのでラストがどういった展開になるのかは残念ながら知ってしまっていたのだが、それでも楽しんで観ることができたのは人間ドラマの描き方が上手いからだ

今作で登場する湯川教授の同窓生であり数学の天才石神を物語の主軸に据え、彼の目線から顛末を描写することで本来の立場が逆転し、鑑賞者からすると湯川教授が悪者の立場になっているのが面白い

そして、劇中で石神の視点を通しているにも関わらず一向に掴めなかった彼のパーソナリティが表出するラストは見事

今作を成功作に導いたのは間違いなく堤真一の卓越した演技力にあり、堤真一なくして今作なしと言っても過言ではないほどに彼の貢献度は非常に高い

石神の纏う悲壮感、冷静さ、そして愛を純粋に求める不器用さを表現した演技からは堤真一の役者としての力量を改めて実感させられた

また、ドラマシリーズの劇場版特有のテーマ曲と決め台詞を不必要に差し込む視聴者を甘く見た演出をしないようにしているのも良かった(もちろん、あるにはあるのだが)