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父親たちの星条旗のGTのネタバレレビュー・内容・結末

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしい。本当に素晴らしい映画だ。文句なしのスコア5だ。なんか平均スコア低いが、なぜなんだ…。こんなに素晴らしい映画なのに…。
太平洋戦争の一つである「硫黄島の戦い」をアメリカ側から描いた作品。戦争そのものを描くのではなく、有名な「硫黄島の星条旗」の写真を巡った戦後を主に描く。写真に撮られた人間たち(ただし生き残った人数は三人にまで減っている)は戦いが終結した後、戦争継続費用のためのキャンペーンに利用される。三人を取り巻く周囲がとにかく嫌らしく、殆どディストピアのよう。国旗掲揚のケーキにストロベリーソースが注がれるシーンが、皮肉が効いててすごく好きだ。英雄と呼ばれることに拒絶感を持つアイラは、人を殺した罪悪感から酒浸りになり、インディアンであるという理由で差別を受ける。ドクは花火の音やカメラのフラッシュを見るだけで、戦争の記憶がフラッシュバックするなど、前線の事をまるで知らない周囲と地獄を味わい尽くした兵士たちの乖離が強調される。戦争の地獄っぷりも、勿論イヤというほど描かれ、中にはかなりグロいシーンも。
英雄と持て囃された三人だか、時期が過ぎればあっさりと忘れられてしまう。酒浸りになったアイラはアルコール中毒で死んでしまうし、英雄の称号を当てにしていたレイニーも名刺を渡された大企業の社長からあっさりと見捨てられてしまうなど、その末路は悲惨。この映画はドクの息子が父親の事を調べるという形式で話が進む。時系列があちらこちらに前後し、その部分賛否両論起こりそうだが、個人的にはストーリーに重層性が齎され、より映画を深くしていたように思う。最後、ドクの息子がこの戦争について、「父たちは国や英雄になるために戦ったわけではなかった。ただ仲間のために戦ったのだ。そうじゃなければ命懸けの戦闘などするはずがない」と結論づける。戦争中だというのに、海岸で無邪気に水遊びをするという「ソナチネ」を思わせるようなシーン、背後には星条旗。このカットで映画は終了する。俺はここで、自分でも引くぐらい泣いた。理由はよく分からない。
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