鹿田鹿雄

父親たちの星条旗の鹿田鹿雄のレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
3.8
76点

硫黄島の戦いをアメリカの視点で描いた原作を、星条旗を立てた数人の兵士の物語として、事実が大きく改変されない範囲で上手く脚色した映像化となっている。

あくまでも今作で描かれる主題となるのは硫黄島の戦いの戦闘ではなく、戦争における英雄とは誰なのかである。それも戦いの勝利国であるアメリカの視点でだ。
その主題について強く考えさせるために脚色された物語で描かれる兵士たちの感情・行動は合点がいくものである。

もちろん戦いの場面にも大きな魅力がある。
それは原作よりもアメリカの敵国である日本の描写がほとんどないことだ。
原作では日本がどのような戦法をしていたか、日本の指揮官がどのようなことをしていたかは少しは解説されていた。
しかし、映画で日本兵が映るのは全編でおそらく数十秒程度だ。
兵士の姿が見えない中での、小銃や機関銃、大砲の見せ方がとても不気味になっている。

原作を読んでいないと少し意味深に感じられる場面があるのが残念だが、誰にでも通じ、考えさせられるきっかけとなる重要な作品である。
全員に観てほしい映画である。
鹿田鹿雄

鹿田鹿雄