きゅうげん

アンブレイカブルのきゅうげんのレビュー・感想・評価

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
3.9
スーパーヒーローとは何かをシャマランなりに撮った映画。
怪我も病気もせず大事故からも生還するブルース・ウィリスは、不老不死の超人なのか、天文学的な確率の偶然が重なった存在なのか。
『ワンパンマン』で言うところのサイタマorキングって感じ。

とにかくシャマランは映画的なセンスが神がかり!
子供の窃視からはじまるナンパな冒頭に、切迫した救命活動と間延びした問診が同居する不気味なワンシーンや、ただ一人生き残ってしまった自分へ集まる待合室の視線など、とにかく演出の温度感が絶妙。
“どんでん返しの名手”みたいに言われがちだけど、スピルバーグのフォロワーだけあって、ストレートな人情ドラマこそ監督の強みなんですよね。女子生徒へのイジメを許さない息子から、凶悪犯を絞めあげる主人公まで、実直なヒーロー観は一貫していて、また夫婦の不和や父子の絆など、サブプロットのドラマの絡ませ方も上手。朝の食卓でお互い泣いちゃうパパと息子にもらい泣き。
ちゃんとミスター・ガラスを警察へ通報するオチも良識的です(劇場公開時はテロップ無かったらしいですが)。

……しかし一方で、シャマラン作品の懸念ポイントである精神疾患の取り扱い方は、すでに本作から見え隠れしてる印象。
やべーヤツがやべーヤツである理由を“病気”で片付けがちなうえ、それがかなり恣意的なバイアスがかかったキャラ造形で、偏見を助長しかねないんすよね……。

ちなみに毎度お馴染みシャマラン監督のカメオ出演は、「薬物密売でボディチェックされる観客」ですね。