KenzOasis

アンブレイカブルのKenzOasisのレビュー・感想・評価

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
3.5
132名の乗員・乗客を乗せた列車に起きた悲惨な事故で唯一の生存者となった、しがないスタジアム警備員のダン。
些細なことでも骨折してしまう骨形成不全症という難病をもって生まれ、「ミスター・ガラス」と呼ばれたコミック・コレクターのイライジャ。
イライジャはダンに手紙を書いた。「君は病気になったことがあるか?」と。しかしダンには、病気はおろか小さなケガひとつした記憶がなかった。相反する体質のふたりの存在には、どんな意味があるのか?

思った以上に暗く静かなトーンの映画だったけど、テンポは早い。重要で、見せなければならないシーンが多かったのではないかと感じる。

ポイントだなと感じたのは、最初にイライジャがコミックを受け取ったシーン。
開けてみるとコミックは反転していたから、イライジャはそれを反転させる。というだけなんだけど、その写し方がその後のイライジャとダンの姿、関係性をも意味しているように思えてならない。

ヒーローの存在を確信することにはなるが、同時にそれは自分がヴィランになることを確信することにもなるという構造。妙に時間をかけて反転させているのは、ダンとイライジャ、それぞれが自分の存在意義に気づくのに時間がかかったことの象徴なんじゃないかと思える。

ダンは自分の運命は決まっているものと諦めていたように見えるが、イライジャは自分の存在意義を諦めてはいなかった。その点を重視して考えてみると、このストーリーはものすごく悲しい一面を持っている。今観てもなかなか前衛的なヒーロー映画だ。
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