りょうすけ

ツォツィのりょうすけのレビュー・感想・評価

ツォツィ(2005年製作の映画)
3.8
「ツォツィ」

ヨハネスブルグに住むツォツィ(不良の意)と呼ばれる少年はある日、車を盗むために女性を襲う。車を奪うことには成功したものの、その車には小さな赤ん坊が乗っていた。扱い方がわからないツォツィは近くの女性を銃で脅し、母乳をあげることを強要。赤ん坊の面倒を見ながらも仲間と犯罪行為を繰り返すうちに、彼の心の中で何かが変わりだす…

性善説を訴えかける様な映画。ツォツィが犯罪行為に手を染める様になったのも暴力的な父親から逃げるために自立しなければならず、そうしなければ生きていけないというスラム街の掟的なものがあってのこと。病気で近づくことができなかった母親に対しての感情が、自分から赤ん坊への気持ちに変換、昇華されているところが魅力的。

自分が本作が性善説を訴えていると思った理由はラストにある。これからのツォツィの未来を観客に託した様なラストは決して悲しいものではなく、誰にでも変わるチャンスがあるという意味合いを込めているのではないかと思う。YouTubeで別バージョンのエンディングも見つけたが、これは非常に悲しい終わりであるが、ツォツィの心の中にある優しさを描いていることに変わりはない。ギャヴィン・フッド監督がその点に関しては一貫して描き切りたかったのだという意味合いが伝わってくる。

ツォツィを演じた俳優はあまり知名度が高い人ではない様だが、焦りや悲しみ、怒りなどの感情を演じるのがすごく上手い俳優だと思った。街に住む夫なき母親に母乳を強要するシーンでは、終始手が震えており、彼が焦っている様を見事に演じていた。またラストシーンの涙の演技もとにかく素晴らしかった。あの演技が無ければ、これほどまでの余韻に浸れることはないだろう。
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