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大陸横断超特急のEikeのレビュー・感想・評価

大陸横断超特急(1976年製作の映画)
3.8
ロードショー時にはクライマックスのスペクタクルシーンだけがクローズアップされていた記憶があります。
だが、実はあれは豪華なおまけ。
本作の真骨頂は何といっても大陸横断列車を舞台にヒッチコックに最大限のリスペクトを奉げたロマンチックサスペンスと抱腹絶倒のコメディを両立させてしまった点にあり。
脚本のコリン・ヒギンズは本作の大成功を受けて、自身の監督デビュー作となる「ファール・プレイ」でヒッチコックタッチとスラプスティックコメディの両立という神業を実現させています。

「今のアメリカ映画」にはもはや望むべくもないFun,Fun,Funなタッチが実にうれしい。
ジーン・ワイルダーのケーリー・グラント気取りも実におかしいですし、売り出し中だったJ・クレイバーグもコケティッシュでちょっとエロいヒロイン役で俄然注目を集めました。
当時のトップ黒人コメディアンだったR・プライヤーもJ・ワイルダーとのコンビネーションでその人気を不動のものに。

ロスからシカゴに向かう長距離鉄道を舞台に、かなりはっちゃけたストーリーではありますがミステリー&冒険談として意外性に満ちています(列車から何度も放り出されながら先回りするアイデアとかね)。
なにより「シチュエーション・コメディ」としてよくできた映画なのです。
これぞ米国製「娯楽映画」のお手本と呼びたい出来であります。

G・ワイルダー氏は後年、ケーリー・グラント氏と合った際にグラント氏から本作が気に入ったと言われたそうで、本作の下敷きと言える「北北西に進路を取れ」との共通点について話が弾んだそうです。
脚本のC・ヒギンズ氏からすれば正に本望と言えるようなエピソードですね。
アメリカ映画でもこういう「洒脱な」作品は最近お目にかからなくなりましたねぇ。
ビジュアルが凄いのはもう分かったのでそろそろ「語り口」に重きを置いた作品をお願いしたいところであります。
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