かつて政府に所属していた遺伝子学者デヴィッドを父に持つ青年で、父と因縁を抱える将軍ロスの娘ベティと共に自身も遺伝子研究を進めるブルース・バナー。ある夜の実験で大量のガンマ線を浴びて怒りと共に超人化するハルクとなった彼が、ロス率いる軍からの逃亡の中で父との間に抱えるトラウマに対峙する様を描いたヒーロー映画です。
数々の人気キャラクターを抱えるマーベル・コミックの中でも世界的な認知度の高い『ハルク』をユニバーサル・ピクチャーズが映画化した2003年公開の作品で、監督にアン・リー、主演にエリック・バナ、製作費1.3億ドル強と力を入れて2.5億ドル弱を稼ぎ出すも評価は賛否両論で続編はキャンセルされてMCUとしてのリブートとなりました。
バトルアクションを新世紀になって進化した特殊映像、キャラクターの持つ悲哀を「失われゆくイノセンス」をテーマにするアン・リーで表現しますが、後者を追う父子の対話と前者を求めた軍介入のスケールのバランスに苦しんでヒーロ映画としての快活さには欠けます。それでも両者で求められる一定のクオリティは担保している一作です。