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ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団のRenのレビュー・感想・評価

4.0
【ハリー・ポッター初心者日記⑤】

面白かった!シリーズの他の作品より20分くらい短くなっているのもありがたい(とは言え138分は長いけど)し、何より昔懐かしいジュブナイルの雰囲気を他のどの作品よりも感じられてとても良かった。未成年映画。

最後まで観れば今作がダークであることが間違いないと分かったけど、むしろ自分は観ている間、初期2作のようなファンタジーらしさがスケールの大きさとVFXの進化を携えて正当なカムバックを果たしたと思っていた。

大人の不当な抑圧と支配に対抗する子どもたちの物語であり、そういった大人と比較したときの子ども性が他作に増して強調されていた。物語の導入も、ヴォルデモート復活の主張に聞く耳を持たずハリーが孤立していくという、「大人(世間)は信じてくれない」映画。
ヴォルデモートとハリーの物語としても着実な進展を見せる一方で、「大人vs子ども」が中心に据えられたジュブナイル映画としてしっかり立っていたところに好感が持てる。

どうしたって劇場版『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』を想起してしまう。
今作のダンブルドア軍団は、ドラえもんのいつもの5人組やかすかべ防衛隊のような、太刀打ちできないような甚大な力や大人の世界に太刀打つ子どもたちとして存在しており、実技授業を封じられた子どもたちが子どもたちだけで魔法を上達させていく流れがとてもワクワクする。

だけどこれがドラえもんやクレしんと異なるところは、子どもが大人に逆転して終わらないところにある。問答無用で盛り上がるラストのアクションで、子ども(ハリー)は肉体的・精神的にズタズタに傷ついていく。
学園が置かれていた不当な支配下からは解放はされたものの、対ヴォルデモートの話の解決していなさ、主にハリーが負った傷の深さを総合して考えると抜かり無くダークだ。
しかし決して単に暗い気持ちに突き落として終わる繋ぎの物語にはなっていない。 『~ インフィニティ・ウォー』的なto be continuedな話でなく、守る物があるからこそ正義は正義であるのだという一つのヒーロー論に帰着するところが一つの物語としてきちんと締まっているし幾分誠実な気はした。因みにIWはMCUで一番好きな作品。

以上のように面白かったのだけど、序盤〜中盤の物語の密度の低さはネックだと思う。中盤までは情報の出し方が基本的に会話ベースなので、映画としてとてもスロースタートな印象があった。
映像のダイナミズム(アクション)の総量は今までの作品と変わっていないにせよ、今までは全編に散りばめられていたそれが今作では後半にギュッと凝縮されていた感がある。後半が始まるまでにもういくつか印象的なアクションがあったら良かったかな。

その他、
○ ホグワーツの面々が、魔法省に行くぞ、と言って30秒後に魔法省内部に入られてるのは拍子抜けすぎる。そんな楽勝なの?
○ ヘレナ・ボトム=カーターのこういう役はもう10回くらい見た気がするけど似合っているので仕方ない。絵本やアニメ的な曲者をそのまま実写にトレースするパワー演技。
○ ハリーとチョウのキスシーンは少ししんどかった。しなくていいよーと思ってしまう。今後のために必要なシーンだったらごめんなさい。
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