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ビートルズ/イエロー・サブマリンのmitakosamaのレビュー・感想・評価

3.8
この素晴らしい作品をどう言葉で説明しろと?
“ビートルズを題材にしてキャラクターとして用いたアニメーション”と言ったらそれまでなのだが、それ以上に60年代アートカルチャーの凝縮されっぷりの凄さですよ。まさに60年代という“時代”を詰め込んだような映像美術。

物語りなんてぶっちゃけ、なんてことは無い。
平和ペパーランドに青鬼ブルーミーニーズが襲ってきて、音楽が奪われてしまう。イエローサブマリンで助けを求めにリバプールまでやってきてビートルズが乗り込む。
旅の途中で時空の中やら異世界やらに入り込み、子供になったり大人になったり。不思議な生命のが暴れる世界に行ったり、穴まみれの世界に行ったり…
で、これが物語上では何も意味が無い(笑)意味は無いのだが、必要はあるんだな。

60年代のヒッピーカルチャー・フラワームーブメントなどの影響を受けた極彩色のポップアート。シュールでアバンギャルドな映像美。
各種デザインが良い意味で無秩序で、自由を求めるイデオロギーの力強さを感じる。
基本はセル画なのだが、例えばリバプールのシーン等は背景にモノクロの写真を着彩したコラージュになってる。
クラシックな映画のオマージュ。ナンセンスジョークの数々。

僕にはわからないのだが、きっとビートルズマニアならわかるネタも数多くあるのでしょう。
ちょっとオトボケなリンゴは当時最も愛されキャラだったらしく、劇中でも活躍頻度が高い。
クールな印象のポール。インドの精神文化に傾倒したジョージはインテリジェンスがあるし、ジョンはアーティスティックなキャラクターだ。

アートという言葉を軽々しく使うのが大っ嫌いなのだが、これほどアートという言葉が似合う映像文化はそうは有るまいて。
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