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ウォーク・ザ・ライン/君につづく道のarchのレビュー・感想・評価

4.2
「俺は生きてていいのか」
兄ジャックを失い、ダメな自分が残ってしまったことから始まる己の存在意義への疑念が本作の根底にある。父との軋轢、誤ちや罪の積み重ねで神に見放されたような感覚、愛する人への想い、そういったものが彼を苦しめる。
彼の音楽行為は全て、彼の人生や感情がそのまま乗ったものになっており、歌詞や歌っている時の表情からそれらが読み取れる。
マンゴールド監督の日常から曲への繋ぎとホアキン・フェニックスの目とイった感じや苦しそうに歌い上げる様はお見事です。

彼が刑務所でライブをしたのは自分が誰かの支えになっていたことを知ったから。ファンなんてものは一時の熱にうかされただけと断じていた彼を捕まりヤク中になっても応援している人がいることに気づくことで立ち直る。
彼は多分刑務所で罪や誤ちを重ね、償っている彼らに共感を抱いたのだと思う。実家において音楽はやってはいけないことであり、彼の音楽は罪と同意だった。また、彼らファンの存在は兄の代わりに生き残った彼の存在意義になっていたのだと思う。

ジョーンまでの"歩く一本道"として描いたのは見事でアーティストには珍しい純愛でストーリー的にも最高だった。
スタンド・バイ・ミーを連想する最初はやはりホアキン・フェニックスのキャスティングだからこそなんだろう。
メタ的な情緒も含めることで最初の僅かな時間でジョニーキャッシュの人生の苦悩の始まりを説明するのも流石職人芸です。

ジェームズ・マンゴールドにハズレ無し。
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