Eike

ロマンシング・ストーン/秘宝の谷のEikeのレビュー・感想・評価

3.8
1984年公開作だからもう40年近くも前の作品なのですねぇ。
だけど今見てもやっぱり面白い。
これは基本に忠実な脚本が良くできてるからだな。

女流ロマンス作家が否応なしに自分の作品張りの冒険に巻き込まれて行くという筋立てそのものには特に目新しいものはないのだが細かいところでくすぐりが効いていて、肩の力を抜いて楽しむことができる。
それまで社会派の作品を選んでいた製作者としてのM・ダグラス(「チャイナシンドローム」とか「カッコーの巣の上で」とか)の選択眼はさすがだ。
でも一番褒めるべきはこれがデビュー作(遺作でもあります)ダイアン・トーマスの脚本でしょう。
女性の為の冒険映画という点でもこれは特に女性に見てもらいたい作品ですね。
トーマス女史はスピルバーグ監督と組むことも決まっていたそうで残念です。

細かなところでこちらの予想を外しながら(ヒーローががさつでがめつかったり)きっちりとロマンチックなお話になって行くあたりの「お約束」も楽しい。
オープニングでくしゃくしゃなお顔を見せているヒロインのK・ターナーがラストでは見違えるようないい女になってるあたりもあざとさよりも上手さが引き立っていますしね。
ラストもユーモアとロマンがあっていい後味です。
やっぱり、娯楽映画はこうでなくっちゃね。
近頃はすぐにCGを使って大げさなスペクタクルシーンを売りにしたりするのが定番ですが、こういう洒脱な大人のためのエンタティメントがもっと観たいなぁ。

元々はデブラ・ウィンガーがヒロイン候補だったそうで、ヒーロー役にはクリント・イーストウッド、シルベスター・スタローンやジャック・ニコルソンにポール・ニューマンまでオファーが出されていたというのも意外であります。
本作はロバート・ゼメキスにとっても初の大ヒットとなり、ターニングポイントとなった作品ですが、スタジオ側は完成した本作を見て興行的に失敗すると確信したそうで、期待の新作「コクーン」からゼメキス監督を外したそうです。
結果はもちろん正反対で、本作は見事大ヒット。
慌ててゼメキス監督に再オファーしようとするもすでに遅しでゼメキス監督は本作の成功を受けて自分の企画した作品の製作に乗り出すことに成功。
それが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」であった訳です。
そういう訳で本作は文字通りゼメキス監督にとっての「出世作」であった訳ですね。

ちなみに原題のRomancing the Stoneと言うのは(宝石の)原石を宝石に加工するための課程を意味する用語だそうです。
もちろんそれはヒロイン、ジョーン・ワイルダーが冒険を通じて自立した一人の魅力的な女性になる過程を示唆している訳で中々に「出来た」タイトルなのですね。
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