イチロヲ

火まつりのイチロヲのレビュー・感想・評価

火まつり(1985年製作の映画)
4.0
山神の庇護のもと、林業に従事している肉体労働者の青年(北大路欣也)が、文明化の煽りを受けるうちに、サタニズムを表出させてしまう。中上健次のオリジナル脚本を採用している、ヒューマン・ドラマ。

三重県熊野市の二木島を舞台にして、林業、漁業に勤しむ住民たちの群像劇を描いている作品。働き盛りの男たちが、小さな町の伝統を守りながら、肉体労働と性欲の処理に励んでいく。演者の馴染み具合が素晴らしく、地元の住民にしか見えない。

北大路欣也演じる主人公は、古代の風習を身に着けている人物像として登場。台詞では語らせないが、「文明の受け入れ」と「伝統の継承」について、頭の中で考え巡らせる。妻役の宮下順子、青年役の下元史朗を始めとして、成人映画出身者が顔を見せる。

終局に入ると、屈強な男たちが松明片手に大暴れするデンジャラスな祭りが展開。そして、主人公のアイデンティティ崩壊へと、一気呵成に雪崩込んでいく。何ともやりきれない気分にさせられる、「後に引きずる系映画」の決定版。
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