三樹夫

カエル少年失踪殺人事件の三樹夫のレビュー・感想・評価

カエル少年失踪殺人事件(2011年製作の映画)
3.4
映画始まってすぐに少年5人が失踪し1996年に時間が流れる。ドキュメンタリーでやらせをやって左遷されたテレビマンが絶対返り咲いてやると、赤マント少年の家に失踪の2か月後にかかってきた電話の対応から、少年たちの失踪には選挙の妨害のため赤マント少年の親が何らかの形で関わっているのではないかという仮説を立てた心理学の教授と組んで事件の真相に迫ろうとする。

華城連続殺人事件(『殺人の追憶』で映画化)とイ・ヒョンホ君誘拐殺人事件(『あいつの声』で映画化)、そしてカエル少年事件は韓国三大未解決事件と言われており、『殺人の追憶』が2003年、『あいつの声』が2007年、この映画が2011年に公開されている。
カエル少年事件は、カエル(カエルは誤報だったみたいで本当はサンショウウオらしい)を捕まえに山に行くと言った少年5人が1991年に失踪。2002年に山で白骨死体が発見され、事故死や他殺、果ては軍の関与が噂されるも未解決となった。

心理学者のおっさんの仮説がトンデモ仮説過ぎておいおい大丈夫かと思うが、テレビマンも視聴率さえ稼げりゃ何でもいいわのチンピラテレビマンという、組んじゃいけない二人が組んで赤マント少年の親が犯人説をグイグイ推し進めていく。それでも親が怪しいかもしれないという演出がなされ、どっちなんだというのが前半。
後半は、視聴率さえ稼げりゃ何でもいいわのテレビマンが主役という時点でおそらく改心的な展開になるのだろうなと予想はつくが、自身にも子供が生まれたことで失踪した少年たちの親の心情により寄り添うことができ、贖罪と人間性の再生の話がメインになる。そしてやっぱ心理学者のおっさんはマッドサイエンティストだった。そらあんなトンデモ仮説ぶち上げてるしね。贖罪と人間性の再生以外にも、『殺人の追憶』や『ゾディアック』のように、事件にのめり込むという要素も入っている。

未解決事件ものの展開は『殺人の追憶』や『ゾディアック』みたいに事件にのめり込み過ぎて人生が狂うだったり、映画内でこいつが犯人と言い切るとか、被害者家族の事件後の生活に焦点をあてるとかあると思うが、やはり『殺人の追憶』と『ゾディアック』の事件にのめり込み過ぎて人生が狂うが一番かな。この二つは演出が上手すぎた。もう少しで真犯人に迫りそうになるも迫り切ることができないため余計にどんどんのめり込んでいって人生が狂うのが、観ているこっちも未解決事件なのを忘れてこれ真犯人捕まるんじゃねとグイグイ引き込まれるので、キャラクターの心情と観ているこっちの気持ちが一致しある種のグルーヴ感が生まれる。
この映画は『殺人の追憶』より後に制作されたのが一番の痛手のように思う。この映画も悪くはないが『殺人の追憶』が傑作過ぎて物足りなく感じてしまう。色々な要素込々だが散漫な印象を与えるし、主人公の改心も予想がつく上に物語として凡庸過ぎるのと、事件にのめり込む様の演出力はどうしても『殺人の追憶』に及んでいない。警察の怠慢とマスコミのデマの批判とエンタメとしてのサスペンス演出、真面目とエンタメとの間で完璧なバランスを取るのに苦慮したように思う。
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