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ビューティフル・ルーザーズのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

NYのアレッジドギャラリーに集ったアーティストたちが、大衆に知られて売れるまでをインタビューと当時の映像で振り返っていくドキュメンタリー。

もとはストリートで遊びでやってた人たちが、たった10年ほどで映画監督になったり有名ブランドとコラボしたり世界的にメキメキとデカくなっていく様が短時間にギュッと詰め込まれていて、尺だけではなくて物理的にもスピーディーで圧倒される。
友人や知り合いで構成されてた集団とはいえ、発起人のアーロン・ローズの周辺がものすごい粒ぞろいだったのがわかる。彼らが世界的に売れるきっかけになった回顧展のシーンで2000年くらいの日本が出てくるけど、劇中で「日本は過激でリアル」と言われていたように、90年代あけたばかりでまだまだ尖った文化があちこちでごちゃ混ぜになってた時代。日本しかり気鋭のアーティストを大々的にフックアップするエネルギーや柔軟さがあった時代が映っていた。
今のSNS主流カルチャーではもう起こり得ない(種類が違うと言うべきか)エネルギーだし、日本の場合SNSだけが衰退の理由ではないと思うけど、今のように流行りが分散してふわ〜っとなることなく広く深くお客さんにちゃんと結びつけられた時代だったんだろうな思った。こういうエネルギッシュな昔の映像を見ると羨ましく、妙に寂しく悲しくもなる。

最初は自分のためだけの制作で、自己セラピーに近い書き方をしていたアーティストたちが、だんだん色んな仕事を受けるようになるにつれ、意識が外に向いていく様とか、「誰かが刺激を受けてくれたり喜んでくれたら嬉しい」というような俯瞰した目線になっていく様子も描かれてたのが面白かった。だからといって、若い頃のような無茶はしなくなったとはいえ決して自分を奢ったり威張ったりせず、「自分はホコリのような存在だ」と言っていたのが印象的だった。アーティストたちがお互いを良い距離感でリスペクトし合っていて、あの頃も今もテンションは同じままなのが伝わってくる。

そこにいけば気鋭のアーティストに出会える発信基地のような場所があったことが心底羨ましいし、今は移り変わるスピードが速い分、根が広がる前に次のブームがやってくるような時代だから良くも悪くもコンテンツが多すぎて体力が減っていってる実感もある。
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