汚職を記した「セラノ文書」を入手した政治家の親友モーリス・ロネの死をきっかけに、政界の陰謀に立ち向かうアラン・ドロンのクライムサスペンス。仏題は「Mort d'un Pourri(腐った者の死)」。あくまでドロンの目的は親友の死の真相を突き止め仇を打つことであり、次から次へと忍び寄る魔の手にも翻弄されず、権力に決して屈しないハードボイルドさが激渋。迫力あるトラックカーチェイスとStan Getzのサックスによるフィリップ・サルドの哀愁漂う音楽が印象に残るが、最大瞬間風速を体感したのはステファーヌ・オードランを映すカメラが途中から殺人鬼に襲われるPOVカメラの演出に切り替わり、車上でイブリン・マクヘイルな死を遂げるノワールホラー的シークエンス。