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座頭市のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

座頭市(1989年製作の映画)
4.6
勝新は別格である。
パンツにマリ○ァナやコ○インの話じゃあ、ナイ。

「悪名」シリーズは先に自害してしまった田宮ではなく彼が居たから成り立つのだろう。
刑事物でも何役でも彼は彼。
きっと全てがアドリブな勝新。
そこに、ひたすら、"勝新"が居る。そうなのだ。

やはり"勝新と云えば座頭市"と思う輩は多いが、実は私もその一人に他ならない。
出演作を色々観ても好みの問題かも知れないが、座頭市の匂いが一番似合うのだと思う。

シリーズの中でも三船との一騎打ちも格別だし、好きな作品は幾つもある。然し、他の座頭市フリーキーがなんと評価しようとも、本作が私は一番好みなんだ。
第一娯楽味わい的に観やすいのだ。

蟹江敬三も、内田裕也も、ジョー山中も、陣内孝則も、そして片岡鶴太郎も、みんなみんな良き味わいを出し切っている。ハマり役、適材適所の配役と思われる。

中でもマドンナ的な女親分の菩薩=樋口可南子の色気は"なんだ?なんだ?なんなんだ〜?"である。
昔、私は彼女の若き頃の篠山紀信撮影の写真集をドキドキしながらアルバイト代で買い求めた。
夜な夜な随分とお世話になった10代後半を思い出すぜ。(照笑)

彼女と座頭市の風呂場での絡みを観た時、私は真面目な話、大人の女性の色気とはこの様に匂い立ち、目眩を呼ぶのか!と息を呑んだ。
それこそ"菩薩の御姿"であった。
本作初めて観たのは20代だったか…未だ青かった己を思い出す。(しみじみとナ)


然し、しかし!
本作で一番の記憶残りは、流れ者の緒形拳なのだ。
"落ち葉は風を恨まない"だったか…違ったか…
彼の語りや立ち居振る舞い、飄々とした姿は、演出を超えて存在が素晴らしかった。
だからこそ主役の勝新が生きたし、脇役の牢仲間の鶴太郎や老いた三木のり平の"生き方"が物語の中から立ってくるし、解り易い陣内と内田と勝新の実息の対立が浮かび上がってくるのだろう。

そして緒形の人生も又、市の人生と重なる孤独の礎が有り、たしかにそれが切ない迄に交差するから…
だから観ている我々は…終わりが読めるだけに、"期待出来ない(してはいけない)期待"をしてしまうのだ。
これこそが「座頭市」の醍醐味かも知れない。


大盤振る舞い。
お決まりの大団円。
敵味方共にある陰日向。
その隙間に、勝新と緒形。
この二人の組み合わせ、配役は唯一本作のみであろう。


永遠の旅の途中で瞽(現代は禁語か…)の市が、優しさと刀を振るう…
それはシリーズ全体の常套と知りつつも、たまに観返したくなる味わいが本作にはあるーと私は思う秋深まる今日この頃。

"落ち葉は風を恨まない"

皆さま、潔く生きましょう!^_^
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