テロメア

バス174のテロメアのレビュー・感想・評価

バス174(2002年製作の映画)
3.6
ブラジルの社会問題が多過ぎ山積み問題。

本作は『シティ・オブ・マッド』(原題の日本語訳『終着駅174』)で扱われたバス事件のドキュメンタリー映画で、監督が『エリート・スクワッド』シリーズのジョゼ・パジーリャということで鑑賞。

流れは知っていたけれど、一番の驚きはブラジル警察は就職できない人が仕方なくやっているだけの、訓練もしていない人らで構成されているということ。そりゃ、訓練されている軍警の特殊部隊ボッピが『エリート・スクワッド』の劇中で「あいつらとは違う」と言うわけだ、と納得。ブラジル警察は銃を持った、ただの一般人でしかないというのは恐怖だ。遵法精神なんてあるはずがない。そりゃ、腐敗したい放題だろうよって話。ブラジルのスラム問題は、どうやら根っこは上から下まであるようだ。

で、そんなどん詰まりの中で、母親を殺され、路上生活では仲間を殺され、生きるために盗みを働き、最後は自らが加害者として他者を襲う。負の連鎖が極まった社会で、延々と怒りの連鎖だけが続く。そんなどうしようもないブラジル社会のドキュメンタリー。最後の私刑したいだけの群衆のお祭り騒ぎは、幼少期に読んだ永井豪の漫画『デビルマン』そのもので、やはりホラーだ。

まあ、パンデミック禍で思い知った、自称先進国の民衆による科学的裏付けや理性的な判断や論理的思考の放棄などの積み上げた知識なしの群衆劇を見せつけられている現在では、どこの国の義務教育があろうがなかろうが「人間ってそんなもん」という諦念を感じる日々では、問題が違うだけで他人事ではないホラー感で違う疲れが出た。疲れているときにドキュメンタリーは見るのは避けようと思う。

ただ、ブラジル映画を連続して観ていると、あちらの映画手法が実際の事件やドキュメンタリー的な映像表現ゆえに、力強いリアリティが醸し出せるのだろうと感じた。カメラがスマホなどで容易に4Kとか撮れる時代だからこそ、映像クオリティによるリアリティより、映像表現としてのリアリティを鑑賞者として求めているのかもしれない、と僕がブラジル映画が良いと思った理由が分析できてきたので、どっと疲れたけれど有意義ではあった。
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