木蘭

わたしは目撃者の木蘭のレビュー・感想・評価

わたしは目撃者(1970年製作の映画)
3.2
 ダリオ・アルジェントの2作目にして、ジャッロ映画の凡作。
 デビュー作の切れ味は何処に行った?

 俳優は良い味を出しているし、盲目の主人公と姪っ子のラブラブな感じとか微笑ましいし、プロットも崩壊していない。粗はもちろん沢山あるけど。
 ただビックリするほど緊張感に欠ける。

 犯人があれ?なのはジャッロ物だから仕方が無いとして、犯人を攪乱したいのかやたらと登場人物が出てくるけどムダが多いし、展開もだるい。主人公が盲目なのも生かされていない。

 この作品から殺人の手口を直接描写する様になるのだが、特にケレン味があるわけでも無い。
 列車にひかれるシーンとか、執拗にガンガンと顔を打ち付けるシーンとかにアルジェントの趣味趣向が出ている様には思うけど、なんだかモッサリしていて失笑してしまう。

  アルジェント映画に限らないけど、異常精神者とか、歪んだ親子関係とか、奇形とか、センセーショナルなネタを仕込んでくるのは見世物映画の基本だけども・・・今回はXYY染色体異常つまりはヤコブ病がキーワードになっているのだが・・・似非科学的で非常に不謹慎なネタだよなぁ。当時は暴力的な側面が疑われていたとはいえ。
 検査して染色体異常の人間を隔離すれば殺人が未然に防げる的な危険な発言も研究者から出てくるのだが、否定的に描いているとは言えない。当時の観客は、まだ記憶に新しいファシズムを連想してゾッとしたりしたのだろうか?

 まぁ、古い作品に現代的な目から見たモヤってしまう要素が色々あるのは当たり前なんだが、気になってしまうのは、話全体にケレン味がないからだろうな。
木蘭

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