むさじー

プレイス・イン・ザ・ハートのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

<差別の中、共に生きる弱者の絆を描く>

ラストの教会のシーンでは、町の人たちが一人ひとり映し出されていく。
浮気から破局寸前だった夫婦はヨリを戻し、KKK団の人たちもいて、何と町を出て行ったはずのモーゼスや亡くなったはずの夫ルイス、リンチ死した黒人少年も隣り合わせて祈りを捧げている。
「こうであったなら……」という強い願いを最後に配することで、どうしようもなかった過酷な現実に思いを巡らす静かで強烈なエンディングだった。

不況の中で孤立する未亡人、ホームレスの放浪黒人、戦争で光を失った障害者。それぞれにハンディがあり、当初は反目し合っていた三人が強い絆で結ばれ、心を通わせていくという物語。
映画解説に「家族を守り抜いた一人の女性の感動ドラマ」とあったが、少し違う気がする。「社会的弱者が、苦難に負けず、手を取り合って生きていく」ドラマの方が適切のような。
それにしても、夫を殉職で失った未亡人、戦争で失明した若者に対して社会はこんなに冷たいものなのか。
まだ社会保障もなく、我が身は自分で守る意識が強いアメリカだからか。
ストーリー的には、こんな厳しい時代にうまく行きすぎ(?)と思うが、それ故に差別・迫害のシーンの恐ろしさが強烈に響いてくる。
この強いメッセージ性は、明と暗のコントラストあればこそと思える。
だが、あまり深読みせずに観ても、楽しめるヒューマンドラマである。
むさじー

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