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L.A.コンフィデンシャルのCinemanのレビュー・感想・評価

L.A.コンフィデンシャル(1997年製作の映画)
4.0
《乱れ撃ちシネnote vol.237》⇒https://note.com/mizugame_genkiti/n/n1a06b6db0632
『L.Aコンフィデンシャル』
カーティス・ハンソン監督
1997年 アメリカ
鑑賞年月日:2024年11月23日 Amazon Prime Video

【Introduction】
原作、キャスティング、演出それぞれが巧みで文句無く面白い犯罪映画の傑作。
真っ青な広い空の下に広がる誰もがあこがれる“天使の街”。
そのロス・アンジェルスを舞台に非合法なビジネスで巨額な富を蓄え絶大な権力で裏側から街をあやつるギャングとそれを取り締まる警察との戦いやら癒着を粋な会話のやりとりとハードボイルド・タッチのシャープな映像で切り取った犯罪映画。

【物語の概要】
1953年末、L. A. 。
ダウンタウンのナイト・アウル・カフェで6人の男女が惨殺された。
ロス市警は捜査を開始、事件の背景に、白ユリの館というハリウッドの有名女優に似せた娼婦たちを擁する秘密売春組織の存在が浮かぶ。
女性に暴力をふるう男を許さない熱血漢バド・ホワイト刑事(ラッセル・クロウ)は、高級娼婦リン(キム・ベイシンガー)に接近するが、いつしか彼女と恋に落ちる。
一方、野心家で出世のためには手段を選ばないエド・エクスリー警部補(ガイ・ピアース)は、おのれの方針に従って捜査を続けるがバドと対立。
そこでエドは、『LAコンフィデンシャル』というタブロイド誌の記者シド(ダニー・デヴィート)と結託して羽振りをきかせ、刑事ドラマ『名誉のバッジ』のアドヴァイザーも務める狡猾なジャック・ヴィンセンズ刑事(ケヴィン・スペイシー)に協力を求める。
捜査が進むうち、事件の背後には、街のボスだったミッキー・コーエン逮捕後の縄張りをめぐる、ヘロインをはじめとする利権争いがからんでいるのが判明。真犯人はなんとバドらの上司で刑事課のボス、ダドリー・スミス警部(ジェームズ・クロムウェル)だった。
核心に迫ろうとしたジャックはスミスの自宅を訪ねたが、あえなく殺された。
エドはリンに誘惑され情事に及ぶが、その光景をシドがカメラに収める。スミスと裏でつながる売春組織の元締め、ピアス・パチェット(デイヴィッド・ストラサーン)が仕掛けた罠だった。
シドは事件の関係者としてスミスらに尋問され、それに立ち会ったバドは、エドとリンの情事を知って激怒。シドは始末された。
市警の資料室にいたエドにバドは襲いかかるが、エドは事件解明のために手を組もうとバドを説得。ふたりは地方検事を締め上げ、例の殺人もスミスの手によるもので、彼の目的がコーエン亡き後、ロサンジェルスの裏社会を支配することだと知る。ピアスはすでに殺されていた。
ふたりはスミスを会合場所のヴィクトリア・モーテルで待ち受け、死闘の末、スミスを倒すのだった。
~キネマ旬報WEBより~

97度(第70回)アカデミー賞最優秀脚色賞・助演女優賞(キム・ベイシンガー)受賞。98年度キネマ旬報ベスト・テン第1位。

【Trivia & Topics】
✥原作について。
原作は犯罪小説を得意とするジェイムズ・エルロイの「暗黒のLA」4部作第3作目「L.A.コンフィデンシャル」。
原作を読んだハンソンはすぐに映画化を希望し、既に映画化権を取得していたワーナー・ブラザースに掛け合い製作・脚本・監督を務めることになった。
ちなみにこのシリーズの1作目「ブラック・ダリア」はブライアン・デ・パルマ監督によって2006年に映画化されている。

翻訳版にして上下巻合わせて700ページに及ぶ1950年から1958年までの8年間にわたる長大な物語をカーティス・ハンソンは一切原作者のエルロイに相談することなく大胆に改ざんして上映時間が約140分に収まる独自のシナリオを書き上げた。
恐る恐る完成シナリオを送るとエルロイは「自分自身が考えていることがキャラクターを通して映画の中によく出ている」と絶賛した。
しかし、
テーマパークを建設中のウォルト・ディズニーを彷彿とさせる映画製作者、
当時人気女優だったラナ・ターナーの愛人で、ギャングの用心棒だった実在の人物、ジョニー・ストンパナートは、実名で登場したり原作のエピソードも巧みに取り入れられている。

✥シナリオも大胆だがキャスティングも見事。
1995年の『ユージュアル・サスペクツ』で既にオスカー俳優だったスペイシーと組ませたのは当時無名だった2名のオーストラリア人俳優だ。
ハンソンはラッセル・クロウの演技はすでに見知っていたがガイ・ピアースに至っては一度も演技が見たこともなかったが本読みで初めて接してピアースしかいないと確信を得た。
アメリカ人以外の俳優を主役に抜擢するなど考えられない時代のことである。
ハンソンはクロウに加えてもう一人のピアースがオーストラリア人だということはワーナーには事前に告げなかったという。

✥魅力的な3人の刑事。
ロス市警に勤務する3人の刑事が事件を担当する。
女性に暴力をふるう男を決して許さない熱血漢ラッセル・クロウ、タブロイド誌の記者とつるんで自分が解決した場面を写真に撮らせたり刑事ドラマのアドヴァイザーを務めて番組にも登場する羽振りの良い悪徳警官ケヴィン・スペイシー、警察学校を首席で卒業したエリートなので上司から内勤で楽な仕事をして昇進しとというアドバイスを退けて刑事として現場で張り切る正義感の新人ガイ・ピアース。
まったく異なった性格の3人がそれぞれのスタイルで事件の捜査にあたり時としてすれ違いながら解決へと導いていく。


ちょっとしたパーティーのシーンで主人公たちが話し合っている後方のステージでジェリー・マリガン・クワルテットが演奏中でソロをチェット・ベイカーが吹いているのもジャズ好きとしてはニンマリさせられた。
本作は時代の気分を表す音楽がジャズだった古き良き時代を背景に描いた90年代アメリカを代表する犯罪映画の傑作。

【鑑賞ガイド】
😁😁😁
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😁😁😁😁😁:見事な作品。
😄😄😄😄:お勧めです。
😀😀😀:楽しめます。
😔😔:苦手です。
🥵:途中下車。
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