ニューランド

有楽町0番地のニューランドのレビュー・感想・評価

有楽町0番地(1958年製作の映画)
3.9
☑️『有楽町0番地』及び『三羽烏三代記』▶️▶️
番匠監督を四番に据えた、レアな松竹旧作が、我々か·それ以上の世代で、人気を集めてるが、会場が小さく先月定員オーバー1人だけに当たって観れなかったトラウマで、見たいと待望してた数本をパスしてきたが、川頭はどうあっても外せない、と睡眠を削って早めに足を伸ばす。
川頭は傑作比率が際立った作家で、かつそれほど目立たず、晩年はTVで木下や山田太一の陰に隠れ、しかし成功の実権は彼の手にあった訳だ。本作も、殆ど1940年代の後半のシュール+スピリチュアルのコメディ·ロッセリーニの様に、宗教的なニュアンスを現代的な喧騒にくるんでる、破天荒な描き進めの天才を感じる。あくまで出て来そうには見えるも、宗教性は現れて来ない日本タイプ。そして、大胆で·ぶっきらぼう·大鉈を舵とした様な扱い、安定したプロとも思えないような筆致が止まない。俯瞰(めの退き)、ロー(の足元)、構図内への大胆な人の詰め込み、傾き図、強引なフォローの縦や斜め回り込みへの移行、何故か刑務所の庭歩かされる囚人ら定期入れ、政治·マスコミ·犯罪·利権·待望活況への流れ。
その中で、撤去·数寄屋橋の後に出来た大フードセンター内で働く娘が、神がかり的な無条件に注目·集客の磁力を持つ無意識の能力が発揮されてくる。彼女を自分の欲に利用せんと導く者により、レジスター→バー→要人広告塔→金庫破り情報聞き出し→TV番組ハイライトにかつぎ出され(そうにな)る。一方、自ら進んで実入りのお裾分け、詩人に共鳴しての詩集売り、へも気配り·関心が拡がる。しかし、後者は、協力された側のプライドを傷つけ、配慮·理解ないと往々に反撥を招く。階段を転げ落ちるように、悲劇を体現して、聖女への途へか、というとさにあらず。冷めて、ドタバタ拡げ、カリスマ性だけが拡大解釈されるだけ。ヒロインは、そこで他人を真っ当大事に·その意志を尊重するも、いじけ縮こまりに·はまるわけではない。悪びれもせず·辺り構わず、目濁らず、普通に身分相応に意見アドバイスし、返され·持ち上げの表面形だけを受けるだけ。しかし浮わついた周りからは、冷めて対人思いとピシャリ本当の事を云う面は退いて、浮世離れの超能力者にしか見えてかない。「謝ってるんだから、聞き入れなさいよ(」「怒りから冷めると君のいうとおりの面も)」/「私はそんな立派な人間では、普通に(欲にかられぬ、)お金が必要だっただけ(、ラストで新生活へ恋人出所)。そんな悲劇の名家でもなければ、寧ろ(、勇敢にも通報したと云われてる)強盗の共犯(」「それは彼女の誤解と収牢者が伝え来た」「この0番地を取り合う2区と汚職·買春の大物が彼女を利用せんとしてる!」「番組、終わり、終わり··」「スポンサーの好意で最後まで」「[偶然、]いいもの見れたね)」。 混乱も、しっかり筋道が浮き上がって来る、人の活力がある。神性も、人のあるがままの延長線上で、特別に選ばれた者は平等に存在し得るのが、川頭だ。
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続いて『三羽烏~』(、二本連続は身体が持たないので、次の番組はパス·軽く仮眠してから)。川頭は、TVでいうと、子どもの頃から馴染んできて、先に云ったように映画については、最高打率に近い人だが、より松竹の屋台骨を背負って来た番匠に関しては、殆ど観てきていない。しかし、今日の2本に関しても、衒いなくしかしどこか控えめに描く川津の云わば、田舎者タッチに比べ、番匠は他愛ない話を、じつに好印象に、ゴタゴタ浮き出ることはなくも、極めてハイセンスなタッチを忍び込ませ織り込んで、楽しませる腕が窺える。だから、現実の重さよりも、思い出·ロマンチストぶりを、自分に対してよりも、相手に対して重んじ·発揮し植え付け、自らの内も円満へ解消してく姿たちが美しい。三羽烏三代と、それに対応する世代毎の女優陣、カップル·家庭·組織·それらを跨いだ組合せ。スッとした·似た呼吸を次ぐ·密やかで気づかせない美しい場面転換、1家屋内隣接位置での動き、複数場交互切り替え。奥の寄りカットへ、90°や45°変、(半)どんでん(出入り)、フォローやいつしか寄る·退く、歌や音楽の入り拡がり、早回しの動き、らが感得出来ない位に鮮やか·空気とニュアンスの味わいをいつしか与え続ける。スターのつるべ打ちも一枚の絵に収まり、全く突き出さない。川津がロッセリーニなら、番匠は実はより秀才のデ·シーカか。
馴染みの料理屋女将と微妙な·男やもめ大学教授ーその元教え子で山岳調査隊継続?の銀行員、妻が開業医の探偵事務所所長ー仲人打診中の後輩の新聞記者、老舗の煎餅屋の婿養子ー学生時代から下宿で今は先の探偵事務所に勤める新婿候補、に新旧三羽烏を置き、その同居血縁か、その恋人らが(当時)最新三羽烏。その1人の恋人となるのが、新教祖が嫌で家出、特別賞金付き捜索依頼の娘で、ひと波乱に。という内容だが、全盛期MGMに負けない?キラ星ごとくのスター群配置が、全く浮き足立たない、演出の微細な才気·統制。
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