林海象のデビュー作であり、佐野史郎のデビュー作でもある。
完全なサイレントにせず、白黒画面に効果音と音楽をのせ、サスペンスを観せる大正ロマン映画。
まるで、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを彷彿とさせる物語である。
サスペンスとしては、直ぐに結論がわかるし、自主制作っぽい場面(ゆで卵の乱用、居酒屋や屋台の群衆の佇まい、など)が沢山あるので、期待していたほどの感動は無かった。
それでも、映像センスは抜群で、とてもデビュー作とは思えない仕上がりである。
佐野史郎は、半サイレントの難しい設定を、上手く自分の演技力の範疇に取り込んでいて、こちらもデビュー作とは思えず素晴らしかった。
林海象が、デビュー作からの世間の高評価と期待感によって、もう一つ伸び悩みしている感が半端無いのは、このデビュー作があまりにも、素晴らしかったからかもしれない。