本作はダイ・シージエが一九八九年に監督した幻の中国映画として名高い本作をようやくVHSで見つけて高額で購入したが傑作だった。今回見るのが初めてだったが、これは当分、円盤化される事はないだろうと思わせられる共産党反対映画である。どうやら仏資金でフランス、西ドイツ 製作の映画で、原題は「牛棚/CHINE MA DOULEUR」で、文化大革命期の中国を舞台に、犯罪者として山奥の更生センターに送られた少年の姿を描くドラマで、「子供たちの王様」の陳凱歌(チェン・カイコー)や「紅いコーリャン」の張芸謀(チャン・イーモウ)「盗馬賊」の田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)や「晩鐘」の呉子牛(ウー・ジニウ)など、数多くの中国映画を見てきた自分にとって、その青年時代を文革の嵐にもまれて育ち、後に当時の体験の意味を真撃にといつつ世界的な注目を一身に集める秀作を連打してきた中国第五世代監督たち。この同じ世代から、また一人、驚くべき才能が居たのかと思い知らされるほどの作品だった。
この映画を見てつくづく思うのが、中国の文化大革命は20世紀の人類史に永遠に忘れることのできない記記録として残り続けるし、ヒトラーのナチズムと並ぶほどの巨大な歴史的事件である事は言うまでもない。チェコ映画でヤン・ニエメツの初の長編デビュー作で、私のALL TIME BESTに君臨し続ける大傑作のナチズム映画「夜のダイヤモンド」と言う作品があるのだが、収容所から逃げてきた若い少年二人が森の中をひたすら走って逃げ惑うと言う映画(既にレビュー済み)で、こういった文革がナチズムがそうであったように、子供たち(少年)たちにも一切容赦なく巻き込む巨大な政治運動だったんだなと思わされた。この映画の主人公メガネ小僧もそうであるように、彼の年齢設定を十三歳にしたのはきっとこの映画の監督者であるシジエも文革が勃発した一九六六年にはまだ十二歳だったからだと思う。あの主人公と自分を少し重ねたのではないだろうか。