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暗戦 デッドエンドのnetfilmsのレビュー・感想・評価

暗戦 デッドエンド(1999年製作の映画)
3.8
 今作は72時間以内に俺を逮捕しろというアンディ・ラウの挑発で始まった恐るべきゲームである。ラウ・チンワンはやり手の刑事だが、出世と責任転嫁しか頭にない堅物の上司と共に、香港の治安を守っている。彼は偶然にも交渉役に指名され、アンディ・ラウをあと一歩で逮捕というところまで追い詰めるが、肝心なところで彼に逃げられてしまう。本作の魅力は、余命いくばくもないが、計画は用意周到なアンディ・ラウの完璧な立ち回りである。彼は末期ガンで、吐血してしまうほど体調は悪いが、最後のゲームのために用意周到な計画を練り上げ、常に警察の二手三手先を読んでいる。狙撃手も人質も刑事さえも煙に巻き、しまいにはバスで偶然出会った黒髪の女まで虜にしてしまうのは、四大天王と呼ばれた美形俳優の面目躍如だろう。彼に対するのは、3枚目の食いしん坊ラウ・チンワンである。刑事として優秀ながら、彼は上司とは対照的にあまり出世欲がなく、とにかくよく食べる男である。自分の署の部下たちはワーカホリックな彼に対してあまり協力的ではない。だからこそ一匹狼の優秀な刑事は、アンディ・ラウの用意周到な計画の片棒を担がされる羽目になる。

 やがてアンディ・ラウの目的がダイアモンドであると知ったラウ・チンワンは、刑事を煙に巻きながら、まるでバディ映画のようにアンディ・ラウと息のあった関係を形成し始める。ジョニー・トー映画によく出て来るヤクザの組織はここでは脆弱な存在で、いつもの顔ぶれが今作では何かの間違いのように簡単にアンディ・ラウに騙されていく。その様子は痛快というよりはただただ呆れ果てるばかりだが、エンターテイメント映画の悪役像をしっかりと踏まえている。ラストのボーリング場での馬鹿し合いは少々度が過ぎているし、アンディ・ラウの女装もまさかそこまでといった感じであまり笑えない。しかしながらジョニー・トーが最も得意とする敵味方の枠を越えた男同士の友情や、主人公と行きずりの女との淡い恋はきっちりと描かれ、スタイリッシュなアクションもだれることなく進む。余命いくばくもない男が取る行動としては荒唐無稽であるが、そこには最後にオチもついている。今作の大ヒットを踏まえ、数年後には『デッドエンド 暗戦リターンズ』として帰って来る。
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