Kumonohate

若い人のKumonohateのレビュー・感想・評価

若い人(1952年製作の映画)
3.9
これで映画版4バージョン全作クリア。桜田淳子版(1977年)の首位は揺るがぬものの、本作もなかなか。池部良のイケメン教師ぶりは役柄にピッタリだったし、久慈あさみのツンデレぶりもサマになっていた。キャスティングのハマリ具合は本作がベストかもしれない。

中でも良かったのが、ヒロインを演じた島崎雪子。奔放と貞淑、少女とオンナ、愛と憎、強さと脆さ…相反する二面性が入り交じった心の機微やそれ故の妖艶ぶりにゾクゾクする。こんな少女に「母親の居る家にいたくないから一晩泊めてくれ」なんて言われて押しかけられたら、理性を保つのは至難の業だ。小娘と侮り、恋愛対象になるワケがないとたかをくくっていた男を、無計略ながらも翻弄し、やがてはその気にさせてしまうような、生まれついての小悪魔を見事に演じている。

それにしても、島崎雪子という芸名が、同じ石坂洋次郎原作の「青い山脈」のヒロイン・島崎雪子にちなんで命名されたのには、如何なる理由があるのだろうか。島崎雪子が「青い山脈」のヒロインを演じたというのならわかるが、彼女は同作には出演すらしていない。「若い人」に関しては、女優の江波和子の芸名が、これまた出演すらしていないにも関わらず、ヒロインの名前・江波恵子にちなんでいたり、テレビドラマ版でイケメン教師役を演じた石坂浩二の芸名が、原作者・石坂洋次郎にちなんでいたりと、何かと役者の芸名が原作や作者にちなんでいる。しかも、いずれも、自分が演じた役名をそのまま芸名にしたというようなシンプルなちなみ方では無い。人気作品や人気作家にあやかって芸名をつけるということが流行っていたのだろうか。それとも、島崎雪子の場合は、その顔が「青い山脈(1949年版)」で島崎雪子役を演じた原節子に激似だったからだろうか。

確かに、「島崎雪子」で画像検索すると、女優・島崎雪子に混じって、原節子の画像が表示される。見分けがつかないという程ではないが、うっかりすると同一人物に見紛うほど似ている。そして、「上海陸戦隊」「颱風圏の女」「めし」における原節子の冷ややかな目線は、確かにゾクゾクするほど妖艶だった。案外、理由は後者なのかもしれない。
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