半兵衛

愛と死の記録の半兵衛のネタバレレビュー・内容・結末

愛と死の記録(1966年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

最初は吉永小百合と渡哲也による爽やかな日活らしい青春映画の展開だったが、随所に出てくる舞台となる広島の戦争の傷痕が残る風景が不安を煽る。そして渡哲也の過去がに判明してからは「原爆」という人類の罪がドラマに重くのし掛かってきて、やりきれなさが残る辛口のドラマに。いくら明るく振る舞っても過去の業苦からは逃れられないし、その因果による残酷な運命は突然やってくる。

渡哲也が最後を遂げてからの吉永小百合の選択は甘いメロドラマの結末というより、あまりにも愚かな道具を発明し多数の人間を滅ぼした人類への抵抗に近い。そんな選択を選んだ吉永に分かりやすい予兆を一切出させず普通の生活をさせ、彼女が大事にしている人形一つだけで運命を示唆して彼女が取ってきた行動の真意が明るみに出る演出に圧倒される。現実でも考えてみたら自殺するとき「今から死にまーす」と叫んで死ぬ奴はいなくて、平凡に暮らしている最中突然死んでいく(異変は所々に残しているけれど)方が多いわけだしね。

蔵原監督の品格のある演出と姫田カメラマンのシャープな撮影、黛敏郎による音楽がまるでヨーロッパ映画のような荘厳な雰囲気を作品にもたらしている。特に画面の奥行きを生かした撮影手法が絵画のような印象を与える。

純情な渡哲也と吉永小百合に対し、それを見守る滝沢修や芦川いづみ、佐野浅夫といった俳優たちの渋い演技の対比も見事。

終盤滝沢修と吉永小百合が話をしている最中、突如部屋が暗くなる演出がホラーのようで怖すぎる。
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