くりふ

白いドレスの女のくりふのレビュー・感想・評価

白いドレスの女(1981年製作の映画)
3.5
【キャスリーンの甘い穴】

『深夜の告白』をみたので、同じく鬼嫁ルース・スナイダー事件を基にした、こちらも久しぶりに、Blu-rayで借りました。

ローレンス・カスダンの監督、キャスリーン・ターナーの主演、それぞれのデビュー作ですね。

悪女にたぶらかされた遊び人弁護士が、保険金殺人に手を染める。レトロにも思えるお話が、80's仕様の扇情と冷笑とで、値ごろに語られます。きちんと作られた、安心して楽しめるランチタイム・ノワール。

重厚感はないですが、心に残る画は幾つもありますね。いちばんは風鈴(笑)。あ、ジョン・バリーの音楽は、音楽だけ聴くと重厚感、轟きますねー。

まず本作とはキャスリーン・ターナーさんです!彼女のひずみが面白い。白いドレスから覗く美脚にまず、男は虜にされてしまうわけですが、脚から上っても、ボン・キュ・ボンには出会えない…彼女は平たい胸族です。豊満な肉体で虜に、とはちょっと違う。原題Body Heatを体現する役なのに。

私は、彼女の隠し技とは、あの危険サイズの鼻の穴だと思います。同じ大サイズでも、例えば篠原涼子さんのそれとは違う、荒々しい淫らさ。美脚で誘うが、薄い胸で気を抜かせ、その隙に熱い穴で吸い込んでしまう…。本作の彼女は、そんな穴で罠を張っているのではないでしょうか(少し本気)。

それを受けたものか、物語自体も面白いバランス感覚を孕んでいますね。元々、白いドレスは扇情より抑制向きのはずですが、逆効果となる出会い。そして、熱い夜を冷ますため、軒下でぎっしりたなびく風鈴の音色が、キャスリーン演じるマティの家では、かえって男の欲情に火をつける逆説。

また、肉体による欲情のまさぐり合いをかなり、直接的に描くことで、マティという女の人間性や、弱さが透けてくるところが面白いんですねえ。文字通り、彼女を裸にしていくように見えるんです。…錯覚なんですが。

「ファム・ファタール」という額縁を外すような効果がありますね。一瞬、彼女を信じようかって気にもなる。…あぶないあぶない。

しかしこれは、既によく知られた女優ではできなかったことでしょうね。と、やっぱりキャスリーンさんのことばかり書いてしまうんですが、相手役ウイリアム・ハートも、なんちゃって弁護士を胡散臭い口髭効かせ、巧く化けているし、若きミッキー・ロークが崩れずに出てるのも貴重です。

火事で始まる、熱い夜と昼の物語。でも映画で暑さを醸すのは難しいですね…。

<2012.12.11記>
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