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ヨーク軍曹のodyssのレビュー・感想・評価

ヨーク軍曹(1941年製作の映画)
3.0
【Holy Fool(神聖バカ)の冒険?】

実話だそうですが、日本との開戦はまだとはいえ、ヨーロッパでは第二次世界大戦が始まっていた頃の映画であり、戦意高揚という匂いがするのはやむを得ないでしょう。

この映画で面白いと思ったのは、主人公が育ったド田舎の様子です。牧師さんがよろず屋(今風に言えばコンビニ)の店主を兼ねている。電話もないし(作品の最後でようやく牧師=よろず屋店主の家につく)、主人公は地下鉄という言葉も知らない。入隊してNY出身の兵隊から地下鉄(サブウェイ)という言葉を聞くもののその意味が分からず、戦場で殊勲をたてて望みをかなえてやろうと言われると地下鉄に乗りたいと答える。当時としても笑えるシーンだったのでしょうが、この頃のアメリカの田舎と都会の格差を痛感させるシーンです。

物語は、そういうド田舎に育った青年が、最初は乱暴者だったものが改悛して信心深くなり、信心ゆえに第一次大戦への徴兵をも拒否するものの通らず、結局戦場で大手柄を立てるという、ちょっといそがしい展開となります。

最初は乱暴者で、なおかつ低地の質の高い耕作地を入手しようと躍起になっていたのが、信心深くなってからは執着しなくなり、周囲の人間ともうまく行き、次に信心深さゆえに徴兵拒否したのに、やがて考えを改めて戦場で次々と敵を殺して大武勲とされるのですから、コロコロよく変わる主人公だなと思いました。ですから、実話だというけどあまりリアリティは感じられません。作り物の匂いが芬々。

まあ、主人公はよく言えばホーリー・フール(Holy Fool)ですかね。一見愚かで欲もない人間にこそ神の恩寵は下るという奴で。でも、戦争では本来関係がないはずだったヨーロッパまで出かけていって人殺しをやるのだから、ホーリー・フールにしても血なまぐさい感じはぬぐえない。アメリカの自己正当化、という印象が見え隠れするのは、戦争中だから仕方がないのか。

主人公と婚約するジョーン・レスリーが、今どきの女優にない清新な可愛らしさを出していて、なかなか魅力的でした。
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