さーすぃ

アメリカン・ヒストリーXのさーすぃのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

差別を生むのは怒り。主人公はそう言っていたが、それだけではないと私は考える。例えば、愛する人を失った喪失感、ハリボテの一体感によって生み出される自分の居場所、そういうものもきっとあるだろう。
私はこの映画から、人々は「理由があるから差別する」というよりは「差別する理由を探している」様に感じた。実際に、"黒人だから"と差別していた主人公は、1人の黒人の助けで自分を見つめ直している。

父を黒人に殺された主人公は、黒人をひとまとまりでカテゴライズし、白人至上主義の思想が生まれ、自転車を盗もうとした黒人たち2人を容赦なく殺してしまった。その後に待ち受けるのは、自分の弟までも黒人に殺される残酷な現実だ。黒人2人の死と、父と弟2人の死。

また、日本においても、安倍総理の国葬が検討されている際に、多額の税金がかかる国葬を反対する人に対して、外国人の生活保護費は年間1200億円もかかっており、こちらの方を削るべきだという意見が話題になった。「自分が所属するカテゴリーを守る」思想と「すべての人が平等に」という思想は似ている様で相反するものなのかもしれない…難しい問題だ。

長くなったが、アメリカ社会と世界全体の差別構造を克明に描いた素晴らしい作品だった。とても考えさせられた。
さーすぃ

さーすぃ