回想シーンでご飯3杯いける

アメリカン・ヒストリーXの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)
4.2
誤解を恐れずに言えば、差別主義者や独裁者の心情を描いた作品には、映画としてとても好感が持てる。逆に彼らの思想や心理の根底に何があるのかを見据えずに、その行動を叩くだけの映画は、新たな反感や差別を生むだけでなのでは無いか?

本作では、黒人に父を殺された主人公デレクがネオナチの中心メンバーとなり、殺人の罪を犯した後に収監。刑務所内での黒人との交流などを経て、考え方を改めていく様子が描かれている。デレクが徐々に差別思想を過熱させていく様子はとてもショッキングであるが、ここを見ずして差別の根本的な問題を考える事は出来ないはずだ。ノルウェーで発生したテロ事件を題材にしたNetflix作品「7月22日」でも同種の手法が用いられていたが、本作も同様に差別問題を考える重要なヒントとなるだろう。

なお、タイトルになっている「アメリカン・ヒストリーX」は、デレクの思想に影響を受け問題行動を起こすようになった弟ダニーに対して、高校の校長が果たした課題の名前から取られている。この課題は、ダニーを更生する為ではなく、ダニーと対話する目的で課されている。本作もまた、回想シーンをモノクロにする等、事の経緯を体系的に捉える為の仕掛けが施されており、ダニーに課された課題と同様、僕達観客に差別問題を考える機会を与える作りになっている。目を逸らさない事、考え続ける事が、何よりも大切なのだという作品のメッセージを感じる。