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デ・ジャ・ヴュのあのネタバレレビュー・内容・結末

デ・ジャ・ヴュ(1987年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「暖炉の中だ」

自分の一言で死なせてしまった男の娘の、涙に濡れた目を見た後で、娘の目に何度も出会ううちに、自分がイエナチュを殺すのではないかという思いが確信に近づいていく様がスリリングでした。視線誘導で現在と過去を無理なく繋いだ語り口が本当に見事でした。

確かに本作は、幻想譚ではあると思いますが、一方で、一人の男の一目惚れから巡り巡って不意打ちで殺されたイエナチュと、取材先からたまたま持ち帰った鈴によって突然魂の扉が開き、前世の記憶の中へ入っていくクリストフの偶発的な運命に、やたらと現実味を感じました。

それにしてもやはりシュミットの作品は、本作で言ったら暗闇の中から浮かぶポンペイウスの娘の顔、ヘカテで言ったらベランダから海に突き落とされたかのように見えるクロチルドのように、一瞬物語を追うのを忘れてしまう不思議な瞬間が本当に癖になります。

あの後味の大変よろしいラストの「確かに体験したんだ...」という感覚には、「千と千尋の神隠し」や「不思議惑星キンザザ」のラストを思い出しました。あの鈴の使い方が本当に上手かったです。役者の顔の使い方はいつも上手いと思いますが、今回は物の使い方も物凄く上手かったと思いました。

あとやはりシュミットの魔性の生々しいタッチが本作でも光っていました。クリストフを暗殺に向かわせるためには、敵にも体を預けてしまう周到さには恐れ入りました。
あ